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オペラ「建・TAKERU」あらすじ

 

[第一幕] 第一場 生駒山麓

天皇の皇子、小碓命(おうすのみこと)は、九州の熊襲(くまそ)を討伐してその名を倭建(やまとたける)と改め、明日はいよいよ倭(やまと)に帰還という生駒山の麓までやってきた。夜が明けて建が兵士たちと共に倭に向かおうとした時、天皇の使者が現れ、倭に帰還することなくそのまま東に向かい蝦夷(えみし)を討て、との命令を建に伝える。かつて建の兄・大碓命をたしなめようと建を遣わしたところ兄を殺してしまうという事件があって以来、天皇は我が子ながら恐れをなして建を遠ざけようとしているのだ。

[第一幕] 第二場 伊勢斎宮

伊勢斎宮の暗い堂内。東征の途上、叔母・倭姫(やまとひめ)のもとに立ち寄った建は悲しみの涙にくれる。そのような建を倭姫は慰め励まし、素戔嗚がかつて八岐大蛇を退治したときに使った草薙剣(くさなぎのつるぎ)を与えて、東征に送り出すのだった。

[第二幕] 第一場 駿河国造館 前庭

駿河国造(するがのくにのみやつこ)が、12の国を平定すべく東に軍を進める建とその従者を迎えて宴会を催している。建を亡き者にしよう謀る国造は娘に建を誘惑させようとするが、建はその手にのらない。そこで国造は、言葉巧みに建を狩りに誘い草原に火を放って焼き殺そうとするのであった。

[第二幕] 第二場 相模の野「火」

草陰に怪しい怪物たちがうごめくところへ、狩りに出た国造と建の一行が姿を現す。怪物たちが二日前に捉えた旅人は建の妻弟橘姫(おとたちばなひめ)と四人の従者たちであった。弟橘姫は伊勢の倭姫から燧(ひうち)入りの革袋を託されて、建のもとに届けたのだ。建らが再会を喜ぶつかの間に、国造らは草原に火を放つ。建は草薙剣を抜いて草をなぎ倒し、燧を取り出して向火をつけさせ国造たちを討ったのだった。

[第二幕] 第三場 走水「水」

建の軍勢は走水海(はしりみずのうみ)にさしかかる。船の準備が整い出帆というとき、海神が大嵐を起こし進むことも渡ることも出来なくなる。そこで弟橘姫は、夫のいくさ船を進めるために海神の生贄になることを決意し、入水して悲痛な辞世の歌を詠みながら水底深く沈んでゆくのだった。…《弟橘姫・建のマリア》

[第三幕] 第一場 碓日坂陣営

建の東征軍は東方12国のうち10国を平定、碓日坂(うすひさか)まで戻ってきた。しかし戦争の空しさを今や身にしみて感じるようになった建は、もうこれ以上血を流すことなく家族たちの待つ倭に帰るようにと兵士たちを促して、軍の解散を宣した。

[第三幕] 第二場 伊吹山

軍隊解散後、建は単身伊吹山の荒ぶる神との対決に向かう。神剣・神器の霊験にあやからず自己の力を試そうとして素手で赴いた建。だが伊吹山に嵐が巻き起こる中を半死半生の建が藪から転げ落ちてくる。

[第三幕] 第三場 能煩野へ〔最終場〕

傷ついた身体で伊吹山と伊勢のほぼ中間あたりにある能煩野(のぼの)の海辺までたどり着いた建は、虚無的になりかけながらも父天皇との和解を求め、安らかで病むことのない祖国の未来を祈念して息を引き取るのであった。…《建の死》

建の悲願は無数の白鳥となって飛び立つ。…《合唱“倭は国のまほろば”》

 

 

 

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