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オペラ「素戔嗚」あらすじ

 

天界を治める天照(あまてらす)は、海を治めるはずの弟の素戔嗚(すさのお)が押しかけてきて、したい放題の乱暴な振る舞いをするのに腹を立て岩窟に隠れてしまう。そのため天地は光を失い暗黒の世界となってしまった。知恵者の思兼(おもいかね)は一計を案じ、群集や女たちを天の岩窟の前に集めた。

[第一幕] 葦原の国

暗黒の中から歌が響き舞の気配がする。鈿女(うずめ)たちが激しく舞い、人々がはやし立てる騒々しさに、天照は何事かと顔を覗かせた。…《鈿女たちの舞》

すかさず手力雄(たぢからお)が岩窟を塞いでいた大岩を押しのけ、ようやく世界は明るい光を取り戻したのだった。…《天照はれ》

群集は素戔嗚を罵り、素戔嗚の弁解も聞かず葦原の国から追放することにした。太い木枠に縛り付け、手足の爪を剥ぎ、髪の毛も抜いて海に流したのだ。

[第二幕] 曽尸茂梨の国

所は変わって、韓の国、曽尸茂梨(そしもり)王国。曽尸茂梨王の妹、金の姫(くがね)と銀の姫(しろがね)は平和な王国に住む幸せを歌っている。…《紡ぎうた(金の姫・銀の姫の二重唱)》

そこに海に出た漁師たちが失神して哀れな姿の素戔嗚を海から引き上げてきた。素戔嗚がどうしてこんな目にあったのかを話すと、人々は葦原の国の人々の仕業に憤慨し、身体が回復し心の傷が癒えるまでこの国に留まるよう素戔嗚に勧める。この言葉に素戔嗚の心の中には初めて人間らしい情が生まれたのだった。

素戔嗚は、語った。父伊奘諾(いざなぎ)に海の原を治めよと命令されたが、母伊奘由(いざなみ)の住む地に行きたいと思い、その前に姉に別れを告げるため天界に向かったところ、天照は素戔嗚が国を奪いに来たと誤解したのだ、と。…《素戔嗚の回想》

金の姫は素戔嗚に心惹かれ、素戔嗚も金の姫の優しさ、温かさに愛情を抱くようになり二人は結ばれる。…《素戔嗚・金の姫二重唱》

曽尸茂梨王が葦原の国の様子を探るために遣った少名毘古那(すくなひこな)は、葦原の国は大いに乱れ悪者が横行し悪病も流行り、人々は素戔嗚を追放したのは間違いだったと言っている、と報告する。曽尸茂梨王がそのことを告げると、素戔嗚は金の姫に乱を平定したらすぐに帰ってくることを誓って葦原の国へ向かう。

[第三幕] 出雲

出雲の国、鳥髪山中。黒い川を遡っていくと、老いさらばえた脚摩乳(あしなづち)・手摩乳(てなづち)の夫婦が娘の奇稲田姫(くしいなだひめ)を抱いて悲嘆に暮れている。八岐大蛇(やまたのおろち)が毎年一人ずつ娘をさらっていき、今度はこの姫の番だという。そこで、素戔嗚は八岐大蛇を退治するため、奇稲田姫を湯津爪櫛(ゆつのつまぐし)に変えて自分の髪の毛の中に隠した。…《湯津爪櫛(素戔嗚のマリア)》

やがて大蛇が現れると、素戔嗚は剣を振るい八つの首を刺し八つの尾を切って八岐大蛇を倒したのだった。…《八岐大蛇退治》

喜ぶ脚摩乳・手摩乳に素戔嗚が湯津爪櫛を返すと不思議なことに奇稲田姫でなく金の姫が現れた。素戔嗚は大蛇を退治した時に体内から見つけた眩いばかりの剣を、恭順の証として天照に献呈したいと言うと「素戔嗚を許す」との天照の声が天界より響き剣は天に昇ってゆく。群衆は素戔嗚に、この国にとどまって国を治めてほしいと懇請するが、素戔嗚は国中はまだまだ乱れていると言って、真の平和が出現した時には、必ず出雲に帰ってくると約束し、金の姫と共に新たな旅へと旅立ってゆく。…《合唱“八雲立つ出雲八重垣”》

 

 

 

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