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なつかしいひと なつかしい歌

 

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渡壁ク(横浜みなとみらいホール館長)

 

はじめてお逢いしたのに「やあ久しぶりですね。お元気でしたか」と握手をしたくなる人がいます。お目にかかるとなぜかなつかしく、こころが暖かくなる人がいます。團先生は、私の交友録の中でもそんな大切な方のおひとりなのです。

まるで、こどもの頃、だれに確かに教えられた、という記憶もないのに、いつの間にかこころの中の忘れられないメロディのひとつとなっている、あの名作「ぞうさん」のように。

初めてお会いしたのは、私がNHKにいた頃、1977年から1984年の3月まで携わってきた「音楽の広場」という番粗でした。毎回、音楽の楽しさを黒柳徹子さん、芥川也寸志さんの軽妙な司会と、様々な工夫をしてお届けするものでしたが、その最終回に近い頃、團伊玖磨、芥川也寸志、黛敏郎の三人の作曲家による「3人の会」を二夜に渡って特集しました。54年に日比谷公会堂で第一回を開き、その後第五回をもって中断されていた「9人の会」。この番組での実現は、実に30年ぶりだったということです。この会の音楽的な意義、また社会に与えた衝撃、影響などについては、どなたかがお書きくださるでしょう。ただ私は、番組の冒頭で、現代の音楽界、というより時代の寵児といえる三人の作曲家が、シューベルトの「軍隊行進曲」を黒柳さんといっしよに“つたなく”連弾され、あまつさえNGもだされたりして、ほほえましく演奏してくださったこと、特に黒柳さんが「皆さん、この方は皆さんご存じのこんな曲もつくられたのですよ」とおっしゃると、團先生があの「ぞうさん」の旋律を片手で弾かれ、そのあと、まるでぞうが鼻をゆらゆらゆらすように手をふられたことなどがなつかしく思い出されます。実は、16年前のこの場面は、私が87年にNHKをやめるまでに関わった300本近い番組VTRテープの中から探し出しました。

16年前の黒柳さんは、番組の最後にこうおっしやっています。「3人の会のみなさん、6回目は?…」

團先生とはこの番組をきっかけにご縁ができました。年を経て、また私にも不思議なご縁があり、ここ「横浜みなとみらいホール」で仕事をさせていただくことになりました。このホールで「DAN YEAR 2000」のお手伝いができることに、無上の喜びを感じております。フェスティバルのご盛会を祈り、團先生とのこの縁(えにし)を大切に熱い握手を。

 

 

 

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