「DAN YEAR 2000」
何といういい響きでしょう。美しさと未来のエネルギーを感じさせる、あの虹を見ているような気分がします。
「夕鶴」の初演を歌わせていただいたあの感動から何十年もたちましたが、想い出はつい此の間のように新鮮です。團さんは、それからと云うもの休むことなく、途切れることなく作品をどんどん世界へ送り込んで下さいました。きっと忙しい毎日でいらしたでしょうに、お会いすればいつも変わらぬ笑顔と博学多識なお話で、私共の心を柔らげて下さいました。パイプのけむりがかっこよくて男女を問わず、皆の憧れの男性でした。
此の度は文化功労者になられましたから、音楽界のみならず、各方面から慕われ、たよられ、今までにもましてお忙がしいでしょう。でもお願いですから、これからは「疲れた」「休憩」を連発してお身休を大事になさってください!!さて、すてきな話をお聞き下さい。酷寒一月の「夕鶴」ニューヨーク公演がすみましたが、風邪がもとで公演がすんだその夜から、私は激しい歯痛に襲われました。痛みに痛み、涙をこらえて寝ていましたが、「もうがまん出来ない」御迷惑を承知の上、團さんのおへやへ電話しました。「歯が痛いんです。すみませんけど痛みどめ買って来て下さい」あちらは夜中もずっと薬やさんは開いていますからお願いしました。團さんは「はいはい、歯ですね、すぐ行って買って来ますよ」。しばらくして救いの神がお薬と共に来て下さって、グラスの水で薬をのみました。お礼も云えない程の私をみて、「明日は大丈夫ですよ」とお帰りになったあと、いつのまにか眠ったらしく、眼が覚めると朝でした。不思議や不思議はれもいくらかひいて人心地がしました。團さんに、「おかげさまでよくなりました」とお礼を申しましたところ、「大谷さん、あれはうがい薬よ」びっくりしました。うがいだなんて!いろんな事が頭の中をかけ巡りましたが、團さんの明るい笑顔に立ち向かう勇気もなく「ええっっ?」と云っただけ。お笑いですね。團さんの話術にまんまとひっかかった私でした。今年は敬愛する團先生の音楽をたっぷりきかさせていただきます。DAN YEAR 2000に心から御礼を申し上げ御成功を祈ります。