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畑中:僕もこの詩集、持っていたはずです。

團:そうですか。3種類出ているんですよ。「マレーの乙女マニアナの歌へる」という題になっているのと、それから「馬来乙女の歌へる」というの、それが2つ、赤い表紙と白い表紙があるんです。少しずつ違うんですけれど、その白い、ちょっと細長いのを先生が成本とするようにとおっしゃったんです。で、マティスが何ページおきかにデッサンを描いている。裸の女の人、つまりマレー乙女ですね。

畑中:それは第一書房じゃなかったですか?

團:第一書房は先生のをたくさん出していますが、あれは昭森社という出版社のです。これは一晩、男の愛を知って幸せな前半と、そこで休憩。それから後、捨てられてから最後に恐ろしいことになるまでの第2部というんで、一晩かかるのを今、永井和子さんと相談しながら、ことによるとフルートが入るかもしれません。

大和田:先生の曲「羽衣」でどなたか批評家が先生の音楽をほめたたえながらエロティックな、という表現を書かれていたんですが、私は思ってもみなかったんですが。フルートは扱い方次第で結構人間の様々な面を表現できるのですよね。

團:でもね、シューベルトの「冬の旅」とかシューマンの「詩人の恋」とか、これは一晩かかりませんけど、「女の愛と一生」とか、ツィクルスで、一晩かかるものというのは、歌手にとっても冗談事ではないし、僕にとっても、ピアニストにとってもそうですね。ただ僕が経巡ってきた東南アジアの国々の、武史さんともよく歩いた熱帯夜の音楽なんですよ、これは。本当に、マレーのね。でもどうしようかな、という所が、2、3ヶ所あるんで、僕は12月の4日から12日まで、マレーシアのマラッカという街に行ってそこで結論を出そうとしているんです。作曲のために現場に行くというのは初めてですけど。これはシリーズの最後を飾ることになりそうですので、是非聞いて頂きたいですね。

伊藤:先生、ばらしていいですか?

團:ええ、いいですよ。

伊藤:この曲集については、私も、堀口先生の訳詩を暗唱するくらい、実は勉強しておりました。

畑中:ああ、そうか、構想は前からあったということですね。

伊藤:そうなんですよ。今か今かと待っているうちに私は老いさらばえてしまいましたが、本当はそうだったんですよ。

畑中:でも、京子さんの生徒さんが…

伊藤:ええ、言葉の縞麗な人、ということで…

團:それで、伊藤京子さんに相談して永井和子さんを推して頂いたんです。いや、これはお年の問題じゃないです。やはり、「熱帯夜」をよく読んでいると、どうしても、メゾなんだな、ソプラノよりも。それで、ソプラノだったら伊藤さんにお願いしたんですが、メゾで永井さんになったんです。まだ彼女は楽譜を持っていないけれど(笑)。

伊藤:よろしくお願いします、それこそ先生のお宅に伺って…

團:いや、いらっしゃらなくても。

佐川:團先生という方は、僕もいろいろ解説を書いたりする関係で、その作品と共に過ごす時間が長くて、人ごとじゃないような感じなんですが、自己批判の厳しい方だと思いますね。ですから、ひとつの作品で素晴らしいものが出来たあと、同じジャンルで次が出来るまでが長いんですよ。

 

 

 

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