日本では品川の教会で初演されたのですが、大和田さんも聞いてくれましたね。
大和田:素晴らしかったですね。
團:とても良かったんですよ、それで今回の室内楽シリーズにも入ります。もう1つヴァイオリン・ソナタでやり残したことがある様だったので、もう1つ書かしてくれ、と僕の方からいって、この間「第2番」を書きました。これも千住さんです。
大和田:是非長いカデンツァの入ったフルートのコンチェルトを書いて頂きたいのですが。
團:それは(笑)玄関をノックしてそうおっしゃれば負けるかもしれません。コンチェルトはね、今のところあのソナタで全ての自分をやり尽くした感じがしています。
大和田:それは本当にそう思います。
團:ですから、どういう風にするか、もともと交響曲やオペラの中ではたくさんフルートのソロを書いています。例えば「夕鶴」だってフルートのソロがなくては終われませんよね。もう少し長生き出来たら、いずれ…ただ、日本のフルートのコンチェルトは、尾高尚忠のがありますね。自分としてもこうしたいな、というのはありますけれど、オーケストラとのバランスの問題もありますし、フルートに関してはもう少し勉強させてください。
日下部:今いろいろ注文が出てきましたけれど、作曲の依頼というか…。
團:大繁盛じゃないですか(笑)。
日下部:團さんにはピアノの独奏曲が少ないですね。
畑中:「三つのノヴェレッテ」というのがありますね。
日下部:ああ、ただ1曲ありますね。これはどうしてですか?
不断の勉強…
團:どうしてでしょう?あの、歌の伴奏とか、ヴァイオリンあるいはフルートとの対話とか、そういう形ではピアノをさんざん書いて、テクニックの相当高いものも書いてきましたけれど、自分も昔ピアノを弾いて、ピアノというものの難しさっていう限界を知った。何しろ人間の指が10本しかないでしょ、そしてパターンというものが出来てしまうんですね、つい左手で伴奏して右手で旋律弾くような。パターン化というものを避けてどういう風に書けるだろうかと。今、一番研究しているのがショパンのエチュードです。ショパンのみならず、あらゆるエチュードです。エチュードの中にこそ秘密が隠されているのでハノンからツェルニーから全てのエチュードを見ながら、僕がピアノを書くなら、どういうフィギュレーションで書こうかと考えています。ピアノ、本当に書きたいですよ。しかし、ピアノというものは、「いつまでも、永久に人を失望させる楽器だ」とベートーヴェンは言ったんですね。ちょっとそれがわかる気がしてきたんです。まだまだ僕は勉強しないといけない。もっと勉強しないとピアノは書けないですよ。同じように無いのが弦楽四重奏曲、弦楽三重奏曲。これは昔習作では書きましたけれどみんな燃やしちゃったから、現在はありません。これも、書きたいジャンルの一つです。
伊藤:そうですよね。いや、私ども、三浦洋一さんと、とにかく勉強しなくちゃできなかったという話をさっきいたしましたが、三浦さんがピアノのパートを弾いているだけで、「すごいドラマがある。ピアニスティックにももちろん大変だし、表現というものを考えさせる」といっていました。