團:ええ、フルートが好き、ということは木管楽器が好きだということでしょうね。結局フルートは原型、というか最も広い表現力を持ち、純粋な音がしますね。オーボエですと、あまり長くオーボエばかりで、というのは難しいことですね、聞く方にとっては。クラリネットというのは、むろんクラリネットの曲もありますが、ちょっとモダンな感じがするので。フルートは、幸い大和田さんがよく教えてくださったので、ソナタを書くことができました。これは僕にとっては自分の中ではエポック・メイキングなことでした、自分がまさかフルートソナタを書くとは思っていませんでしたから。やはりフルートのいい曲を書いた入達を考えますと、イベールですとか、ドビュッシーというフランスの人達、いろんな音がありますね。日本には横笛というのがあります。それも葦笛、龍笛、種々あって、それと発音原理も似でるし、それでフルートを書くというのには何の抵抗もなく書けました。でも難しいですね、フルートの曲を書くことは。
日下部:さっきの交響曲6番にも独奏の笛が入っていますね。
團:あれには篠笛と能管が使われています。赤尾三千子という、日本の笛の素晴らしい可能性を追求している同士がいるものだから、彼女に吹いてもらいました。今回の演奏でも出演してもらいます。
日下部:金管はあまり好きじゃないんですか?
團:いや、好きじゃないということはない。元陸軍軍楽隊にもいましたから(笑)。オーケストラの中では金管を使いすぎるとよく言われるんですね。僕自身も非常にセーブしないといけない、ブラスバンドじゃないんだから。ブラスバンドはそれとして僕は好きですし。しかし、金管は注意して使うべき楽器なので、ソロの作品を書くのは今のところ、ちょっと難しいですね。
大和田:先生のような大作曲家でもそうなんですか?
團:大作曲家じゃないですよ。
大和田:管楽器というのは非常にマイナーな楽器ですけれど、ヴァイオリンや歌に較べれば、ソロの楽器として扱われるのが非常に少ないんです。それが、フルート独奏曲と共に、三重奏とか12本の夕鶴のファンタジーとか、アマチュアでフルートの音色を楽しむ人のためにも先生は素晴らしい作品を書かれたという気がします。先生の笛に対する感性は本当に自然で美しく見事ですし、4時間位のオペラがそれぞれこの20分弱の中に入っているという感じが誠に驚きです。
日下部:まあ作曲家は特定の独奏者がいることによって、触発されてその人のために書くといわれますが、今の話でいいますと、フルートの場合は大和田さんをお目当て、ヴァイオリンの場合は小林さん、とはっきりと特定してお書きになっているところはありますか?
素晴らしい演奏家たちからの触発
團:それは特定の向こうに特定でないものはむろん見えてはいますが、とりあえず、親しい方、それに演奏家として僕が尊敬する方に「書かない?」といわれればこんな嬉しいことはありませんよ。それにその方たちの能力、特徴をフルに活用することで、自分のテクニックも増えてきますし。正直、「ヴァイオリンのファンタジア」を書いたときなどは、難しくて筆が進まなくて、ついに小林君は僕のハ丈島のスタジオまでやってきて後ろに座って「終わらなきゃ帰らない」(笑)って…すごまれたから出来たようなものです。