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それから、皆様が仰っているように、「歌曲」の「歌」といいう心がフルートの作品の中にも出てきて、しかも「ドラマ」ですね、これは交響曲やオペラをお書きになる作曲家にしかできない、といいますか、しかも日本の心というか東洋人の心が曲の中に蓄積されている。実は伊藤京子先生もおっしゃるように、オペラの「アリア」の様に、フルート独奏曲も非常に格調高く、しかもどんな人の心の中にも「ぞうさん」と同じように入ってくるような音楽としてできています。その後ある時、アルメニア人であり、今世紀のハープ界の女王といわれ、イスラエルの第1回のコンテストの1位となったスザンナ・ミルドニアンさんが、ちょうど日本のハープ界の産みの親みたいなヨゼフ・モルナール先生と私が共演した所にいらして、どうしても私と演奏したいとおっしゃってくださいました。アルメニアは東洋ですね、それから二人ともパリ音楽院で勉強したという共通ベースがあるということ、2人の女性、ということ等から團先生が何か書きましょうと仰ってくださって。それで私は大好きな琵琶湖に行くといつも思い浮かべる情景を辻丼喬さんに詩にして頂いたものをお渡しし、その詩に團先生が惹かれてくださって「羽衣」という作品ができました。「フルートとハープ」という非常にナチュラルな、古代からある組み合わせでありながら、先生方がおっしゃいますように、日本で演奏しますと日本の曲という感じがするのですが、外国で演奏しますと、中国大陸の、というか東洋全体を感じるんです。

團:「羽衣」の他にも何かありましたっけ。

大和田:その後はフルートとピアノ作品、ということでは先生がオペラでお忙しくなられてストップしていますが、「花の街」のオブリガートとか、編曲で「笛の音のする里へ行こうよ」とか、「笛」という歌曲をフルートだけで演奏したりしました。

團:今度の中では、僕のあこがれのハーピストのミルドニアンも来てくれて、彼女と「羽衣」を再演してくれるという。これは私自身も非常に好きな作品です。

 

全作品の通奏低音としての“歌”

 

日下部:今、大和田さんのお話を聞いていますと、フルートのもとにも「歌」があるということでしたね、さっきのオーケストラの場合でもそうでしたけど、やっぱり先生の作品の根幹に「歌」があると、そう思われませんか、畑中先生?

畑中:もちろんそうです。全作品に通底するものですね。

日下部:全ての作品の中に歌がある。それがフルートで表現されたり、色々…

大和田:ええ、私たち器楽奏者はオペラのプリマドンナにはなれないんですね(笑)それが残念だな、と思っているところに、なんとオペラじゃなくてもプリマドンナになれる、という音楽と出会うわけなんですね。だから多くのフルートファンが先生の曲を演奏するときにそういう感じを受けると思います。

日下部:さっき、小林先生が團節とおっしゃいましたけど、それはやはり歌ですか?

小林:どのソナタにも、ロマン派というのは歌があるといいます。團節というのは誰が聞いてもぱっとわかる、例えばベートーヴェンやモーツァルトを聞いてもぱっとわかる、それと同じ様なレベルの話だと思います。

日下部:まあ、モーツァルトはフルートが嫌いだ、といわれることもありますが、先生の場合は、フルートはお好きですか。

 

 

 

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