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また、なかには、團さんの使うオーケストラが非常に大きいという人もいますけど、3管編成程度のオーケストラなんて、今はごく当たり前のことです。それがいかに使われているかということが重要なので、もっと必要もない楽器をたくさん並べたり、打楽器ばかりが支配的な作品を書いている作曲家もけっこういます。

 

第7交響曲への期待

 

いずれにしても、團さんのようなシンフォニーが書ける人は、そう数多くいるとは思えませんし、私は矢代秋雄さんのシンフォニーなど、ごくわずかな作品がそこに挙げられると思っています。そうした團さんのシンフォニーでは、5番のあと6番までの間に20年ほどの時間がありますね。その間が、「ひかりごけ」と「ちゃんちき」の時代なのですが、それらを経て出てきたのが「HIROSHIMA」と題した6番という訳です。実は、私は、今回の企画の中に第7シンフォニーの初演があったら素晴らしいのにと思っていたんですが…ありませんか?

團:出来てない作品についていうことはタブーですけれど、7番は頭の部分はもう出来ていて、各楽章に声、声楽が入るという変わったものです。

藤田:それは6番のシンフォニーで、團さんが新しい方向に向かったのか、それともただ一時、前の道からちょっと横の方に手を出したのか、その結果を知るのが7番だと思っておりますので、ぜひ聞きたいと待っているわけです。

團:7番は、2管編成です。縮小した形です。小林さんはシンフォニーも弾いてくだすっているし、僕のシンフォニーを全部やった読響のコンサートマスターでもいらしたし、オペラも「夕鶴」のソロはずうっと弾いていらっしゃるし、両方またがってご存じだから、何かご意見でもあるのではないですか?僕が司会者じゃないけれど(笑い)。

小林:團先生の曲は僕は、どこで聞いても何しろ音が出た途端に、ああ團伊玖磨の曲だなってわかりますよね。それは一番大事なことじゃないかと思うんです。

團:どうしてでしょうね。

 

なんといっても團節

 

小林:いや、それは、團節(だんぶし)があるんですよ(笑)。すぐにわかります。というのは、私は、團先生とのおつきあいは約50年、半世紀おつきあいいただいて、最初はNHKの劇伴(劇の伴奏音楽)でした。他には小倉朗さんなどいらっしゃいまして、「ぞうさん」みたいな曲を、当時は録音などなかったんですね。生放送でした。そんな中である時、「ヴァイオリンの曲を僕にひとつ書いてよ」と気軽にお願いして、その結果「ファンタジア」3つとソナタ1つ、室内楽1つ、5つも書いて頂きました。N響のスウィトナーという指揮者がいまして、ある人がコンチェルトを弾いたときに、ある人が「どうだった」と聞いたんです。すると「ひとつのものを本番200回やれ」といわれた。それはものすごくショックで、200回の内100回は團先生の「ファンタジア1番」の方はいっているかもしれません。日本だけでなくあちこちで弾かせて頂いていますので、何とか200回にこぎつけたいと思っております。

 

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小林武史

 

 

 

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