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それで真剣に書いた作品ですが、その大人数が出ることが大きな負担になって、経済的に出来ないので、未だに再演されない。これは、是非、近々…

畑中:3幕5部ありますし、本当のグランドオペラとしての骨格をもっているように僕は思います。これは是非再演して欲しいですね。

藤田:初演はサンケイホールでしたね。あれはもっと新国立劇場のようなところでも上演するといいですね…

小山:新国立劇場の舞台機構が活躍しますと、相当な出来にしあがりますね。

畑中:そうですよ、これは是非やらなくちゃならない作品だと思います。鮮烈な「ひかりごけ」も。「ひかりごけ」で僕は初演の時に批評を書かせていただきましたけれど、前の晩に、皆さんに内緒で森正からスコアを借りてきて、丹念に拝見して初演に臨みました。神奈川県民ホールでやった「ひかりごけ」も、浅利慶太とはまた違う視点から、加藤直さんが素晴らしい舞台化をなすった。やはり、演出が変わると作品の色々な光のあて方でまた変わってくるものですから、どんどん色々な演出家でやるといいですね。

日下部:これも初演は大阪で、演出は浅利慶太さんでしたね。

畑中:そうです、フェスティバルホールで、いまだに忘れようもないすごいショックを受けました。あと、「ちゃんちき」も、やはり民話的なものですけれど、これもドイツをまわりましたよね?

 

ヨーロッパでも高評のオペラ「ちゃんちき」

 

團:はい、ドイツ、ハンガリー、ルクセンプール。東ドイツ・ドレスデンのゼンパーとハンガリーの国立オペラ、それから飛んでルクセンブールの国立劇場、他にも2ヵ所位あったかな。

畑中:やはりそれぞれの国で、受け取られ方というのは違いますかね。

園:そうですね、あれは現代的な意味で親子の、世代の断絶そして結局断絶というものは、より若きものにスブリングアップするための断絶であって、心配することはないというような、楽観主義のオペラですけれど、東ドイツからもっとも素晴しい批評をもらいました。そしてちょうどそれは、11月の何日かにベルリンの壁が倒れる前の、数ヵ月前のことでした。で、もうライプツィッヒ、ドレスデンは毎日デモまたデモで解放を要求してました。稽古しているさなかにホーネッカーが辞めたりしました。そういう状況だったにもかかわらず、オペラとしては非常に理想的な上演ができました。ハンガリーの人々も日本の音楽が非常に好きですね。

畑中:やはり何か共通するものがあるんでしょうね。これも血が騒ぐというか。

團:大変な理解を示してくれて、オーケストラも血が騒いでくれました。

日下部:「ちゃんちき」は大阪の公演の時には私もお手伝いさせてもらったんですけれど、何かギリシャ劇を再現するような、そういうスタイルでしたね。特にコーラスの使い方が、いわゆるギリシャのコロスの様な使い方でやられたということ。それからもう一つ、例えば、これは、きつねとかわうその話ですが、ここに人間が介在してくるという、自然の生態系を人間が乱していくみたいなところがあって、そういう近代的な解釈というか見方をしてしまったんですが、それはどうですか?

團:その通りです。その点は佐川先生がいい論文をたくさん書いていらっしゃいます。

 

 

 

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