今、畑中先生が、團先生の作品の根底には声がある、とおっしゃいましたけれど、私は本当に直接「声」を使ったオペラを歌わせて頂きまして、私がずっと團先生の「夕鶴」をはじめ「ちゃんちき」、そして團先生の歌曲の殆どを歌わせて頂いて、やはりそこで私自身の歌い手としての「声」というものへの勉強といいますか、声を使っていかにそれを音楽的に大切な詩を表現していくか、ということの、私自身の個入的なことになってしまうのですが、技術的な、また内容の表現の深い掘り下げを学ばせて頂いたというのが團作品でございます。
畑中:まあ「夕鶴」は、上演回数は断トツですね。国民的オペラといいましょうか、もう上演回数は600回超えますね、現在ではどれ位ですか?
團:650回位じゃないでしょうか?つい最近もイタリアで上演されました。
畑中:そうです、10日位前ですか、イタリアのパヴィア、それからマツチェラータで「夕鶴」を…
日下部:ああ、神戸オペラ協会の海外公演ですね。
畑中:はい、大変成功したそうで、プログラムを拝見しまして、舞台装置も簡素ながら、とてもシンプルなステージだけどいい装置だし、聴いているイタリア入が、皆涙を浮かべて帰っていったと聞いています。字幕を出したのが大変良かったらしく、イタリア人が非常に心を打たれて、また来年も来て欲しいといわれたと。ところで、モスクワで上演したのはいつでしたっけ?今年ですよね?
團:ええとあれは9月でしたから…去年の9月、そうもう去年になります。
畑中:ああ、そうでしたか。まあ、こういう具合にこのオペラは日本だけじゃなくて世界的に共感するものを持っている。木下さんの民話にしてもそうですが、やはりその音楽を以て全世界の人に訴える力が「夕鶴」にはある。これはやはり素晴らしいことで、もちろん日本を代表するオペラでもありますけれども。ところで、一時「聴耳頭巾」の譜面がなくなって、二期会が再演したいと思っていても出来ない時代がずっと続いたのですが、幸いに出てきて。その話の顛末はどうだったんでしょうか?