自分のみで判断し処理しなければならないことの多い状況に置かれた監督者の職員がやっと事案を片付けた後、うつ状態となり自殺し、―前出の荷おろしうつ病―これは労働災害と認定された事例があります。
仕事上での人間関係が、精神的な過重になったと考えられる場合も少なくありません。職場内での人間関係については、なかなか微妙なことが多くて判断の難しいことが多いようです。職場のいじめについても、実際に職場でいじめにあったとか、上司や同僚から様々な精神的圧迫を受けたなどといった訴えをされることがあります。これは、必ずしもいじめとは関係なく、異動の時の状況による場合もあるでしょうが、前任者が十分に引継ぎをしてくれなかったために、精神的過労に陥ったと、労災認定を申請してきた例もあります。確認が困難なことが多いのですが、これは本人や家族が訴えてくることがあって、周囲の見方と全く異なることもあるので、極めて慎重な調査が必要となってきます。この場合、それぞれの認識の違いということが、認定上での困難な問題となります。第2巻の職場のストレスのところで述べた、職員間の考え方、大げさにいえば人生観の相違や相性の問題まで考えてしまうと、簡単には判断できませんし、逆に労働災害としては、そこまで立ち入る必要があるのかどうかということになってきます。
セクシュアル・ハラスメントや、非喫煙者が煙草の煙で自律神経失調症になったということでの労働災害認定の申請もあります。
また、中間管理職といわれる人たちでは、上司と部下との板挟みのような状態となって職務遂行上の困難をきたし、それが大きなストレスとなって、心身の不調に至ったという例も少なくはありません。
職場外での人間関係、もちろんここでは職務と直接関係があっての対外的なものということになるわけですが、よくあるのは、何らかの事業計画の中で、地元との折衝が大きな精神的負担になることがままあります。地元にはそれなりの思惑があったり、利害関係が絡んできたりすると、それを遂行する立場の当事者にとっては、頭の痛いことが多くなります。