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カウンセリング技法に優れたカウンセラー、経験の長い精神科医などが、カウンセリング・マインドに基づいて対応することになりますが、前に説明した職場不適応の中にはカウンセリング的対応が有用である場合と、それだけでは解決ができないものがあること、カウンセリングの限界という問題についてもよく認識できることが必要です。そこで、個人では困難なことも多くなって来ますから、どのようにチーム相談にもっていったらいいか、場合によっては外部の機関への依頼も含めて幅広く対応できるように準備していくことが大切になってきます。

相談を受けたことについては、相談員の立場などで、すべてが法的に守秘義務が負わされるとは限らないのですが、相談の内容はほとんど全てが本人のプライバシーに関することといえます。相談を受けた結果を家庭や職場とも話し合う必要が出てきた場合、あるいは職場や家庭と連絡して対処を考えなければならない状況になった時に、とりあえず家庭はいいとしても、職場へどう反映して、本人のためにいいように計らうにはどうしたらいいのか難しい問題が起きてくることがあります。相談を受けた内容や結果によっては本人が拒否あるいは気が進まないといっても職場へ連絡せざるを得ないことさえあり得ると思われます。そういうことも配慮すれば、優れたカウンセラー、経験に富んだ精神科医というだけでなく、その職場の事情に明るく、それを加味しての相談ができる人であればそれに勝るものはないということになるわけです。

相談室には、直接の相談員さえいればいいということではもちろんありません。むしろ、その相談の前、後の対応や処理が重要で、そのために、今いったような直接カウンセリングなどにかかわる職員たちでなく、依頼を受け付け、その相談の内容によって適切に相談が受けられるようにお膳立てすることが何よりも大切です。補佐的な仕事というより、そこからすでに相談なりカウンセリングが始まっているともいえると思います。相談員という言葉を使いましたが、医師とカウンセラーだけを相談員というわけではないことを念のため付け加えておきます。携わる人たちが、その本人の職場の状況をよく分かっているということが望ましいとすると、その辺で、合同の相談室の弱点が出てくるかもしれませんが、これは長短ですから、何とか運営面で工夫していくしかないと思います。

 

 

 

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