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例を挙げるときりがありませんが、このような人たちは能力的に劣っているということではありません。一言でいえば、周囲の人と協力して仕事をやっていくという協調性に欠けるところが番職場としての悩みになります。具体的なトラブルの例は挙げるまでもないと思います。

前に述べたヒステリー性格といわれるようなタイプの人は、実は仕事をやらせると非常に几帳面によくやるといいます。一方で、気分がムラですから、持続的にということが困難で、仕事の上で周囲に迷惑をかける状況をきたすことがあります。

従来からいわれてきた、人格障害の分類やICD10の人格障害の診断名などを挙げることは簡単ですが、かえって繁雑になるであろうということや必ずしもタイプをはっきりと決められない人格障害もあること、また、人格障害とまではいえない程度の性格の方から俗にいう変わり者という人もいるなどということから、あえて分類は示しません。大まかに人格障害あるいは性格の偏りというのはどのようなことかを理解していただければいいと思います。

さて、そこで大きな問題は、このような人たちを職場としてどう対応していったらいいのかということになります。

精神病患者そのものではありませんから、治療をすればよくなるというわけにはいきません。人それぞれ性格は違うのだからそれをよく理解してあげること。といっても、それには限度があるのは仕方のないことですが、本人の自覚の有無に関わらず、治療的には困難なことが多いのも事実です。

無断欠勤が多かったり、職場で大きな問題を起こしたり、時には犯罪につながるような反社会的な問題があれば、退職を勧告することもできるでしょうし、極端な場合は制度の上では分限免職ということもあるかと思いますが、実際には職場としてもこのような処置はとりたくないというのが、正直なところでしょう。もちろん、自分からドロップアウトしていく例も少なくはありませんが。

職場の人事課から依願退職を勧めたいので、本人を診察してくれるよう頼まれて、本人と面談しても、職場での問題行動という事実だけで、具体的に診断がつかなかった例もあります。

 

 

 

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