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対応については、本人から上司なり、健康管理者などに相談があったら、親身になって聞いてあげることはもちろんですが、上司などが自分で抱え込まず、やはり、医師やカウンセラーと相談して一番よい方法をとることが望まれます。

問題は周囲で気が付いても、本人に自覚のない場合、これは特に狭義の精神疾患などで多いのですが、一番対応に困るものです。精神科ということを少し口に出しただけで興奮する、拒絶的になる例がよくあります。何度もいいますように大変困る例ですが、数として多いということではありません。このような時は、だからといって放置するわけにはいきませんから、上司などが、健康管理医などに相談して適切な処置をとるより仕方がないことになります。強いていえばこのようなケースは、カウンセリングなどの対応ではどうにもならないということです。まれには、調子が悪そうにみえるから内科へ行ってみたらと勧めて、本人が承知して内科を受診したところ精神科へ紹介されてうまくいったという例もないわけではありませんが、なかなかいつもそんなふうにはいかないでしょう。ただ、上司などとしては、なかなか部下が精神的に具合の悪い状態を健康管理医のところへ行って訴えることに、何か抵抗を感じるということはあるでしょうが、本人のため、職場のためと割り切ってもらう勇気も必要です。

具体的にどうするかということについては、治療面も別として、職場としての考え方は前に述べたと思います。

くどくなりますが、カウンセリング・マインドでは解決できない例があることを知ってもらって、対応を誤らないようにしたいと思います。

職場復帰については、休養を含む十分な対応で、ほぼ心配ないという例は、ある程度の配慮ですむわけですが、何らかの障害を残したと思われる例が大変困ることは、すでに述べました。この場合、障害といっても精神的な働きについては、なかなか目に見えるものではないため、なお、判断や処遇に困ることがあります。よく世間で障害者の社会復帰に向けて暖かい援助の手をといいますが、現実には思うようにいかないのが事実です。

同じ事を繰り返しても仕方がありませんのでこれで止めますが、このようなメンタルヘルス対策、職場不適応への対応といったものは、一朝一夕にできあがるものではなく、職場がその重要性を十分に認識して息長く取り組んでいくということにつきるかと思います。そしてあくまでも理想は理想、現実は現実というのも仕方のないことで、可能な限りでの最善をというのは蛇足になるかもしれませんが。

 

 

 

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