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心身の不調で休養した後出勤してきた職員に、暖かく援助の手を差し伸べるようにというのは、正論ではあるかもしれませんが、時によっては現実的でないことがあります。

いつになったら通常の勤務に戻れるのか、これは職場にとっても本人にとっても大きな命題になりますし、気の毒だからと一言ではすまされない問題を含んでいます。

もっと深刻な問題としては、数の上では多くありませんが、いわゆる精神疾患を発症して−結果としては職場不適応という現れになったわけですが−静養し治療を受けたが、精神的な面で作業能力が低下したと考えられる事例です。将来ともに回復しないということではなくても、当面は今の状態が続くのではないかと判断される場合があります。身体的なものですと、事故でけがをした、脳出血などの病気の後遺症など、労働災害に当たるかどうかは別として、ある程度周りでも分かりますし、なんとか対応も考えるかもしれません。ところが精神疾患、余り具体的な病名は挙げたくないのですが、精神分裂病などの場合の能力の低下というのは大変説明しにくいし、またかなり精神科専門の見方もあるので、余り詳しくは取り上げませんが、漠然と作業能力の低下と考えておいてください。前にも述べたかもしれませんが、発症は本人の責任ともいえず、気の毒といえば気の毒ですが、一方で発症の要因が職場の方にもないということになると、復職させる側にとって大きな悩みとなります。くどくなりますが、全く仕事ができないという場合は問題外で別の対応になりますし、ここではある程度の仕事はできる状態になったことを想定しての話です。

職場のメンタルヘルスとしては、やって欲しくないことの一つですが、通常の業務が困難、またいつになったら完全に復帰できるかの見通しのつかない職員がいた場合にだれでも考えるのは、辞めろというのは気の毒だが、できたら他の職場に変わって欲しい、引き取って欲しいという声が出るのも無理のないことでしょう。職場での「たらい回し」や「ばば抜き」はやって欲しくないと、私たちは声を大にしていいたいのですが、それぞれが忙しく仕事をしている現状を見たり、上司や同僚の不満や愚痴を聞くと、ついその声も小さくなってしまうというのが正直なところかもしれません。

 

 

 

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