日本財団 図書館


よく話も聞かないで、すぐに医者に行くようにいうのもどうかとは思いますが、一方で、いつまでも自分で抱え込んでいてもどうにもならなくなってしまいます。この辺の判断や対処がよくできる管理職であってもらうためには、メンタルヘルス教育が大切で、これについても後で述べてみたいと思います。

上司の立場では、その職員が、神経症やストレス反応の仲間なのか、狭義の精神病なのかを判断することを求められているわけではありませんが、これまで述べたようなことを参考にして、医師−専門医へのレールを敷くところまでは、求められるのかと思います。管理職というのは、もちろん仕事の上でもそうですが、部下の健康管理という一面も負うと考えてもらえれば幸いです。精神科的な治療の面についてはふれませんが、精神科の専門的な治療では、これまでの発症の要因、経過、背景を考慮にはいれますが、一方でその時現れている症状を主体にしての治療であることも多いので、神経症群(心因性)だからこう、狭義の精神病(内因性)だからこのような方法をとるということではありません。一応、一般には、心因性、主としてここではストレス要因によるものの場合は、薬物療法の他に精神療法やカウンセリング、当然十分な休養を含めての対応、内因性の場合は、より精神科専門治療ということになろうかと思います。特に前者の場合は、療養中でも、カウンセリング・マインドを踏まえてというか、職場としてのサポートが重要であると考えます。

結局、職場不適応への対応は、本人が早く、広い意味での治療を受けてよくなることが一番の目的ですが、本人のためとはいってもなかなか辛いこともあるわけですし、一方、職場としては、心身ともに健康な職員が働いてくれることが望ましいのは当たり前のことで、中途半端な状態で職場に出てこられるのは困るというのも分からないわけではありません。家族としても自分たちだけではどうにもならないことが多いわけですから、それなりに悩みもあるわけで、このようなそれぞれの立場を踏まえてどうしていったらいいのかを考えていくことになるでしょう。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION