日本財団 図書館


(4) 職場不適応の背景とは

背景にあるものとして、いわゆる精神疾患、特に内因性あるいは狭義の精神病に入るものの場合は、上司の対応のみとかカウンセリング・マインドだけでは、どうにもならないことの方が多いのではないかというのは何となく分かると思います。もっともその中の一部、うつ病などは、発症が環境要因よりも素因に基づくとしても、本人に自覚のある場合もありますが、精神分裂病のような病気の場合には、本人が病気であることを全く認めようとしないことがままあり得るからです。

そのことはともかく、特に環境要因などからくるストレス性のものについては、第一の対応は休養を取ることです。精神科的な治療(主として服薬)やカウンセリングも、もちろん大切なことがありますが、ゆっくり休養を取るだけで回復したという事例もよくみられます。しかしここにも問題がないことはありません。入院を必要とするほどの重大な状況ならともかく、職場の事情で、ゆっくり休ませることがなかなか難しいとか、本人も休みたいと思う反面、休みにくい、あるいは性格的に几帳面な人やうつ病の人は休むことに抵抗を感じるということもあります。三次介入のところで出てきますが、休んで家にいても周囲の目が気になり、おちおち休んでいられないということもあり得ます。そうなると、これは単にカウンセリング・マインドとか上司の本人を思っての対応だけでは、どうにもならないことで、職場全体としての取り組みとしかいいようがありません。休まないまでも、極めて超過勤務が多くて、疲弊状態あるいは軽いうつ状態などに陥っていて相談を受けた人に、「それは薬などではどうにもならないのだから、思い切って仕事を減らすしかない」と勧めても、「職場の事情でそういうわけにはいかないのです」とか、「前任者も同じようにやってきているので、自分だけやらないわけにはいかないのです」という答えが返ってくれば、はっきりいって相談された方もお手上げということになってしまいます。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION