日本財団 図書館


一方で辛い本人も、身体の症状と違って、「このごろよく眠れませんので」とか、「自律神経が不安定のようなので休ませてください」とはいい出しにくいというのも何となくわかります。そこで、もちろん言葉を選んでですが、上司などの立場の人は、やはり様子のおかしい部下などがいれば、早く休養や受診を勧める決断が必要となってきます。あくまでも、自覚のある場合ですが、このような時は声を掛けられて本人もほっとして、自分でも対応を考えることができるのです。

問題は、あきらかに周囲からみて、前に示したような変わった行動があったり、常識的とは思えないような発言があったり、以前の本人とは全く違うような状況が見られても、本人がそれに気付かない、自覚がない場合です。この場合には上司や周囲としても、大変困るものです。それとなくいってみても別にどこも悪くありませんといわれてしまいます。これは後で対応について考えてみることにします。

さてそこで、精神的不調、職場不適応の状態が、自他ともに認められたとして、大切なのは、その背景にあるものをよく把握することで、これはその先の治療を含めての対応に関係してきます。

前に述べた、様々な職場のストレスが原因となっているのか、何か他に身体の病気があるのか、職場とは直接関係のない個人的、家庭的な悩みがあるためなのかなどです。職場におけるストレスについては繰り返し説明はしませんが、精神疾患発症の要因のところで述べたように、身体の病気からきていることもないとはいえません。個人的、家庭内というのは、例えば失恋とか、子供の問題、あるいは借金というかローンなどで家計が苦しいとか、また高齢化社会になってきて家に老齢の親、それも痴呆の始まった年寄りを抱えていて、自宅に帰ってもゆっくり落ち着けないなどということが実際にあり得るわけです。こんな時、それは職場のこととは直接関係ないからと突き放してしまう訳にもいかないでしょう。もちろん、上司として相談にのれるには限界がありますから、このような問題については、適切な相談相手を探すことになりますから、いわゆる相談室の設置などということが、職場にとっても重要な課題となります。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION