N課長の場合、部下に対するセクハラの加害者ということになって、人事部より厳重に注意を受け、始末書を書き、賞与も下がりました。しかし、彼女が、これだけでは収まらず外に訴えて出るなどの行動に出るのではないか、という不安が日を追って高まっていました。カウンセラーとしては、このN課長が再びSさんに接近するのではないかと予感しました。彼女に会って直接話をすることで不安をなくしたいという心理(衝動)から、突然そういう行動に出るということが懸念されました。そうした唐突な行動の結果、Sさんとしては「会社内だけでは解決できない」と考え、外に訴えることを考えるかもしれません。結局は双方にとってマイナスが大きくなるだけです。
カウンセリングを通じてこういう予感がしたため、「N課長の方からそのSさんに接触することは決してしない」と約束してもらいました、この例では、Sさんの方から「課長とは二度と顔を合わせたくない」という要望が出されていたので、直接会って謝るという対応はされませんでした。
一方で、Sさんに対しては、人事部から、会社はセクハラは決して許さないこと、上司に対しては始末書を取るなど厳正な対応をしたこと。こういう問題を繰り返さないためのカウンセリングを実施したことなとが伝えられました。
その後、N課長の不安からくる不眠や強い緊張感は収まってきて、仕事に専念することができるようになったといいます。N課長が自分の非を認められたことがよかったと思われます。
こういう問題が起こる最大の原因は、職場の日常のコミュニケーションの不足があります。男女の意識にはかなりのギャップがあるから、お互いを理解し合えるようなコミュニケーションを取っていないと、このギャップに気が付きません。このケースでは、Sさんが本当に不倫をしていたのかは分からないし、そのことを注意することは難しいけれど、秘密情報を決してもらさないという基本ルールを教えるためのコミュニケーションは必要であったと考えられます。
最近目立つ職場の男女間のトラブル例に「疑似恋愛タイプ」があります。上司(または同僚)から特別な好意を持たれたことによって示される性的言動を相手の女性が望まない場合です。女性がそういう意思表示をしても繰り返されると、仕事を続けていくことが苦痛になります。また、その女性は周囲からやっかまれることもあって孤立無援となることがあります。そういう事態に早めに気付き、性的言動をやめれば元は悪意から行ったことではないので、信頼関係は取り戻せます。