「キーパーソンである上司のカウンセリング能力が不足」
その後、Aさんは、本店営業部に転勤しましたが、支店の雰囲気とは一変しました。上司との関係は、タイプが合わないというか、しっくりいきません。上司との関係がうまくいかないことで自分の評価が悪くならないかという不安もふくらみました。しかし、Aさんへの期待度は高く、それに応えようとして追いこまれた気持ちになっていったといいます。
そういう中で、仕事をこうやろう、ああやろうと考えていて一晩中眠れない日が続き、睡眠が3、4時間しかとれず、めまいや頭痛がひどくなりました。5月の連休明けに突然、何も考えられなくなり、頭が回らなくなりました。お客のところへ行っても普通の会話ができない精神状態になって、とうとうAさんは上司に相談しました。上司からは、「気持ちの持ちようだよ。もっとテンションを上げなきゃだめだ」と言われたといいますが、その後も仕事にまるで気持ちがついていかない状態が続きました。
そうこうするうちに、今までやっていた仕事すらできなくなりました。日に日にできるものがなくなっていきます。意欲的に仕事に取り組んでいたのがうそのように、気力が衰え、急に体重が減って、体力も落ちてしまいました。毎晩眠る前に飲むお酒の量が増えていったといいます。Aさんは、上司にこのような自分の状態を話して、とにかく一週間休暇を取りました。しかし、状態は変わりません。その後は休みが目立って増えたため、上司から「重要なお客の担当はほかの人にやってもらうよ」と言われたといいます。
「高い評価を受けていた自分がただの人になり、またこの先どこまで落ちていくのかわからないと思うと耐えられない気持ちになった」とAさんは深刻な顔で話しました。家庭にいても妻との関係が険悪になってしまっているために、気持ちが休まらないどころか一層疲れてしまうという悪循環が重なりました。