6 管理者のカウンセリング・マインドがいかに有効かを様々な実例から考える(民間企業の実例から)
ケース1 メンタル・トラブルから救った上司の一言
ある新規プロジェクトを遂行するために社内のエースを集めたチームが結成されたが、プロジェクトは失敗。元の職場に戻ったメンバーたちは、そこで激しい心身症に襲われてしまいました。
某大手電気メーカーの研究開発部門では、会社の重点戦略の柱となるテーマを決めた際に、全国の開発部門で働く社員の中から選りすぐった約100名を集めてプロジェクトチームを作りました。この開発には会社の将来がかかっているということで、同社は人、物、金を思いきって投じたのですが、その期待もむなしく、このプロジェクトは1年余りをかけた揚げ句、あえなくつぶれてしまいました。
集められた社員は元の職場に戻っていきましたが、その後に心身の深刻な不調が続いている人たちが目立ちました。社内の健康診断では以前にはまったく問題がなかったのに、胃潰瘍が発見されたり、肝機能に赤信号が出たりした人たちが続出したのです。
「プロジェクトの解散の後に体に変調を起こした」
地方の研究所からプロジェクトに参加したY氏(38歳、既婚)の場合、特に深刻でした。
Y氏は家族と離れて単身赴任したため、長期の出張のような生活でした。プロジェクトがつぶれたのは残念と感じましたが、自宅に帰れることになり、また元の職場は気のおけない仲間ばかりなので、落ち着いた生活に戻れるとも考えていました。ところがその後、いつまでたっても精神的な不安がつきまとって落ち着かないという状態が続きました。
「ほかの人には先があるのに、自分には先がないんじゃないか。これからも失敗ばかりが続くんじゃないか」といったことをあれこれ考えこみ、気がつくと夜中の3時くらいになっているということが多くなったのです。