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つまり、相手の内面的な世界、相手の人間性そのもの、相手のその時の深い全存在につながる気持ちや感情などを、積極的に分かろうと働きかけるきき方をいいます。と同時に、そのことが相手に伝わっていることが重要です。つまり相手に「よく分かってもらえた」「親身になってきいてもらえた」と思ってもらえるような聞き方をすることです。言葉を換えていうならば、「相手が、安定し、自由になり、心を開いて安心して話をしてくれる、そういう場を提供できるような積極的な話のきき方」と言えるのではないでしょうか。

3] 「積極的傾聴」のもたらす効果について

「聞く」や「訊く」ではなく、話を「聴く」と相手側にどのような変化が起きるのでしょうか。その特徴的なことを幾つか箇条書きにしてみたいと思います。

ア カタルシス(浄化)効果が起きる − うっ積している感情が吐き出されることで気持ちが楽になる

イ 話を聴いてもらい、感情を受け止めてもらえたことで、自己肯定感が生じてくる

ウ 自己受容できるようになると、他者も受容できるようになる

エ 自分の内面を見つめ、自分と対話することにより「気付き」がうまれる

オ 内面的変化が自己成長を促し、行動変容へとつながります「聴く」ことの効用、必要性がお分かりいただけたと思います。

しかし、そのことがいくら頭で理解できても、実際に「聴く」ということは、大変難しいことのように思います。それではなぜ人はなかなか「聴く」ことができないのでしょうか。

4] 「積極的傾聴」はなぜ難しいかについて

現実問題として、日常生活とりわけ効率を重んじる職場において、私たちは話をキチンと「聴いて」いるでしょうか。例えば、部下が上司に相談を持ちかけたとします。上司はそれを「聞いて」あるいは、疑問の箇所を「訊いて」、何がしかの指示・助言・命令等を与えることに終始しているのではないでしょうか。

 

 

 

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