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つまり何もしていないのではなく、部下が自ら問題解決をし、人間として成長することを、積極的に見守っているのです。そしてこの部下を優秀に育てるか否かの分岐点が、ここでいうところの「積極的傾聴」ができるかどうかにあるのではないでしょうか。

実はアメリカの小話にも次のようなものがあります。「内科の医師は何でも知っているが何もしない。外科の医師は何も知らないが何かする。そして、精神科の医師は何も知らないし何もしない。」というものです。もちろんこれは笑い話ですが、実はこの何もしないということが大変重要であり非常に難しいことのような気がします。

実際の相談場面を思い浮かべてみて下さい。こちらはあくまで問題の外側にいますので、相談者の問題を冷静、客観的に聞いているうちに、「その問題にはこうした方がいいよ」とか、「自分の時はこうやって解決したよ」つい親切心で言いたくなります。しかしそれは、あくまでも問題の外側にいる私の答えであって、本人が真に求めているものと同じとは限りません。つまり、「真の答えは、悩んでいるその人の中にある。私の中にあるのは一般論だ」というのが、ロジャーズの提唱した「来談者中心療法」(Client-centered Therapy 1951)の最も基本的な考え方であります。ロジャーズについては、後ほど詳しく述べたいと思いますが、その中で彼は、「人間は他人によって「修理」されるような存在ではなく、温かく見守ってくれる人との関係の中で、自らの力で問題を解決し、成長していくのである」としました。ロジャーズは決して「あなたの問題の正体はこれですよ」といった診断や助言はしませんでした。相談者の話をきっちりと「傾聴」し、理解したことをフィードバックしていくうちに、相談者本人が、自分の力で問題を整理し、成長していくことを証明しました。そしてそのプロセスにおいて最も大切なことが、ここでいう「積極的傾聴」をするということ、つまり相手の話していることを積極的に分かろうと働きかける聴き方であるとしました。

 

 

 

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