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ア コンサルテーションとは

コンサルテーションとは、医師、弁護士、経営コンサルタントといったある分野の専門家が、目の前の患者や相談者に対して、その相談の事柄のみに焦点を当てて、専門知識や科学的なデータをもとに、問題を分析し、診断し、評価して、最も適切だと思われる対処方法を提示することをいいます。

例えば、医師が目の前の患者の症状に合わせて薬を処方するように、職場で悩みを抱えている部下に対して、上司が自分の経験から「君の問題の答えはこれだよ」と即座に解決策を与えることをコンサルテーションといいます。この場合両者の関係は、明らかに上下関係にあります。こうして相談者の当面の問題は解決されるわけですが、その際に相談者は自分では何も考えず、また内なる自分は何ら変わっていません。したがって次にまた同じような問題にぶつかった時も、自分の力で解決しようとはせず、外に向かって解決策を求めるということになります。つまり、依存的、他力本願的な傾向が身につき、何度でも同じ問題を繰り返すという結果になりがちです。

さらに、このコンサルテーションを受けるには、相談者側にある程度の受け容れる用意(レディネス)が必要であると思われます。つまり、表面的には困難に陥っていても、本人自らが、その問題のありかも、それに対する解決の方向性も見えていて、その具体的解決策だけを教わりたいというときには、このコンサルテーションは極めて有効であると思われます。

しかし職場における問題は千差万別で、相談内容も多岐にわたっています。相談者が心身ともに健康で解決策だけを欲している場合は、適切な解決策を提示し問題を即座に解決に導くことが、上司に求められる最も重要なことです。しかし相談者の中には、問題が余りに大きすぎて、自分でもどうしていいか分からない、あるいは何が問題なのかが分らなくて悩んでいる人もいると思います。このような人に対して、上司が一段も二段も高い所から、「はい、あなたの答えはこれですよ」と、解決策を与えたところで、本人には何の解決にもなりません。

 

 

 

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