(8) 広がる価値観ギャップとダイバーシティ(多様性)尊重の必要性
社会構造が変化し、横並び社会が崩壊した以上、もはや、価値観の多様化は避けることができません。
実際に、価値観の多様化現象はすでに始まっています。例えば、キャリアについていえば、「若いうちから仕事を頑張って行い、スピード昇進コースを進んで、早くハッピー・リタイアメントをしたい」という人もいれば、逆に、「のんびりと仕事をしていきたい」という人もいます。お金に関しても考え方はまちまちで、たくさん稼ぎたい人もいれば、お金よりも別のものを重視するという人もいます。また、職場に対して育児出産などに対する配慮を求める人もいれば、子供は生まないのでそのようなサービスはいらないという人もいます。年金制度などに対しても、自分の働く団体や会社にそれを求める人もいれば、逆に、自己責任で自分のことはやるので福祉も福利厚生も年金制度も最小限でよいという考え方の人もいます。
いずれにしても、キャリアに対する価値観も、お金に対する価値観も、家庭に対する価値観も、福祉政策に対する価値観も、もはや一律のものではありません。ですから、その対応においても、多様な方策が必要とされています。福利厚生などの分野で、自分の必要なサービスをメニューの中から選べるカフェテリア・プランを取り入れる企業が出てきているのもこの流れです。
こうした価値観の多様化の流れは、職場内に限った現象ではありません。外部の人たち、つまり公共団体でいえば住民がそれに当たりますし、企業でいえば顧客がそれに当たりますが、住民や顧客の考え方も多様化の方向へ進んでいます。企業は顧客ニーズの多様化に対応したサービスを考え始めていますが、公共団体でも、一律のサービスではなく、住民個々人の価値観に応じて選択ができるような対応が求められ始めています。
「まず相手の話を聴く」というカウンセリング・マインドの考え方は、職場内だけではなく、住民サービスや顧客サービスの観点からも重要性が増してきているといえるのです。