こうした状況を受けて、労働省では、働く人のメンタルヘルス対策を企業に要望するために、「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」を発表しています。この中で導入することが望ましい4つのケアとして、
・労働者自身による「セルフケア」
・管理監督者による「ラインによるケア」
・事業場内の健康管理担当者による「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」
・事業場外の専門家による「事業場外資源によるケア」
を挙げています。
このうち、管理監督者による「ラインによるケア」は、上司が部下に対して心のケアの面で配慮をするというものですが、この取り組みが職場でのメンタルケアにおいては、かぎを握っているといえます。職場で労働者の心のケアをするには、毎日接している直属の上司がかかわるのが一番自然であり、一番対応もしやすいからです。
普段から、自分の部下が働き過ぎではないか、心の問題を抱えていないかなどということに気をつけながら、コミュニケーションを図っていき、もし何らかの問題を抱えているようであれば、早期発見、早期対処につなげるということが重要となっています。
このようなメンタルケアという観点でもカウンセリング・マインドの必要性はますます増してきていると言えます。
(7) 一人一人を尊重するのがカウンセリング・マインド
ところが、ここで気をつけなければならないことがあります。それは、前述のようにストレスフルな環境になったことによって、労働者がみな心理的にパワーダウンするようになったと思い込んでしまう危険性があるということです。確かに、「環境の激変→働く人が心理的に苦しくなる」という構図はあるのですが、短絡的に決めつけてしまっては、職場におけるカウンセリング・マインドは成功しません。