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そのような環境下で、多くの企業はホワイトカラーを含めた大胆な人員削減などでダウンサイジングを図っていきました。自社の弱い事業を切り捨て、強い事業に経営資源を集中するなど経営戦略も大幅に転換しています。外部資源を有効に利用するアウトソーシングも始まりました。さらに、業務のコンピュータ化を進め、効率化を図っていくなどの方策も取られています。

今の言葉で言うならば、「リストラ」と「IT革命」という言葉で代表される大きな構造転換が80年代から90年代にかけて始まっていったといえます。

この流れは90年代に入って日本にもやってきました。日本の大企業は、バブル崩壊と、復活したアメリカ企業に押されたことにより、国際競争力を失い、劣勢に立たされました。そのため、人員を抑制し、派遣社員などを活用し、コンピュータ化によって業務の効率化を図るなど様々な方策が取られています。

それでも、大胆な人員削減にまで手を着けるところは少なく、「アメリカに比べたらまだ手ぬるい」などと言われていました。ところが、それを一変させたのが、97年末の北海道拓殖銀行、山一証券の相次ぐ破たんでした。それまで、つぶれることはないと信じられてきた都市銀行、大手証券が事実上倒産をしてしまったことは、多くの人や経営者に衝撃を与えました。

それ以降、日本では従来タブー視されてきた人員削減も急速に広がりました。株式市場からも強い圧力が掛かったため、終身雇用と思われてきたような超大手企業も次々とリストラ策を発表したのです。

このときをターニングポイントとして、事実上、終身雇用制度は崩壊したと言われています。以来、ビジネス界のトレンドはすっかりと変わってしまいました。当然のことながら、働いている人の心理に極めて大きな衝撃を与えています。

「もしかしたら、自分の職も安泰ではないかもしれない。いつかは自分の職も失われるかもしれない」という危機意識を持つ人が急速に増えたのです。

 

 

 

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