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(4) 管理者のカウンセリング・マインドによる効果は多大に

カウンセリングの理論や技法は様々なものがありますが、それらのベースになっているのがロジャーズの「来談者中心カウンセリング」です。まずベースになるものを身につけることが大事でしょう。ロジャーズの理論は、その時代の文化的・人間的基盤の上に、ロジャーズ自身の豊かな臨床経験と観察力が結晶したものといわれます。理論を実践的に学ぼうというときには、その理論の創始者自身のことを書いた著作がもっとも分かりやすいからです。『ロジャーズ自伝』(1967年)の中で、ロジャーズは自らの人物像をこう描写しています。

「一人の人間として自分を見るとき、基本的な意味で自分自身の人生への対処の仕方を肯定的であると思っている。社会的にはやや内気だが、親密な人間関係を好む。いつもそうできるとはかぎらないが、人間に対する深い感受性をもっている。他人を見る目が乏しく、他人を過大評価しやすい。心理学的な意味で他人を自由にする能力をもっている。戦いに勝ち抜いたり、仕事を完成したりする頑固な決意ができる。他人への影響力を求めているが、権威や権力でそれを果たそうとは望んでいない」

ロジャーズは、カウンセラーの資質がある人は、人間関係に感受性をもった人であり、他人の反応をあるがままに(naturally)観察することができる人であるといっています。そしてすぐれたカウンセラーの特微について、次の4つを挙げました(講座サイコセラピー1『カウンセリング』)。

1] 「客観的態度」(共感能力)

個人に対して非人格的な距離をもった態度という意味ではありません。統制された同一視、つまり相手の感情と自分の感情を混同させないで接する仕方です。この客観的態度には誠実で受容的で関心をもった態度、あるいは相手の感情を深く理解するといった概念が含まれます。これは後に共感的理解と呼ばれるようになります。

2] 「個人に対する尊重」

相談者は、何も好き好んで問題を起こしているのではありません。カウンセラーは、相談者の置かれた心理的状況を深く重んじながら、新しい人間関係をつくり出す努力の中で、相談者もその苦悩の状況から立ち直れます。

 

 

 

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