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それ以後、ロジャーズはそれまで行われていた心理療法に対して批判的な立場をとるようになり、「どんな立派な理論でも役に立たなければ意味がない。何がクライアントに役立つかが一番大事なことだ」と主張しました。

ロジャーズはこれまでの古い諸方法を指示的(directive)とし、自分の新しい立場を非指示的(non-directive)としました。指示的で問題のある方法として、命令、禁止、訓戒と誓約、再保証と勇気づけ、説得、強力なアドバイスなどを挙げています。ここで問題があるとされている方法は現実に多く使われて効果も上げています。また、問題によって指示的と非指示的を使い分けることが肝心でしょう。ロジャーズが指摘しているのは、例えば指導的立場の人が自分の見方や考え方をあらかじめ決めて、相手の話を聞いていき、相手をある方向にあざやかに引張っていこうとするやり方に対して危険性を訴えました。そういうやり方をすれば、自立心をもった人は必然的に抵抗するだけだし、依存的な人はますます依存性を強める結果になります。

ロジャーズ自身の経験から、「この人の問題はこういうことじゃないか」とレッテルを貼ってしまうことに慎重になったといいます。ロジャーズは、自分のことを自由に話せる(自問自答ができる)場をつくることがもっとも大切であり、心理的自由の中で人は変化していくことを強調しています。そしてカウンセリングを実践する際には、相手に対して共感的な態度で接すること、そして、相手をいかに理解したかを「レスポンス」(反応)すること、言行一致している態度(言っていることとやっていることが一致している)を示すこと、自分の資質(人間性や特微)を活かしたやり方で行うこと、個人がお互いに信頼関係を持てるような雰囲気を用意することで葛藤やテンションが減ることをポイントとしました。

 

 

 

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