つまり、カウンセリングによって、来談者の決定を促すほんのささやかな心理的な助けをすることが、その人の人生に大きな効果を及ぼすというわけです。
カウンセリングが管理職にとって重要な仕事だとする企業や公共団体は、とくにアメリカに多く見られます。「初級士官の職務のうちでもっとも時間を使うものはカウンセリングと面接である」。これは『NAVALLEADERSHIP』(アメリカ海軍士官候補生読本・アメリカ海軍協会)の中の一節です。海軍の作戦行動の中で、将来の兵器がどのようなものになっても。人間という要素が非常に重要なものであることが明記されています。日本では『リーダーシップ』という題で紹介されました。この本はかなりのページをさいて、働く環境が厳しければ厳しいほどカウンセリング・マインドが必要不可欠になることを分かりやすく説明しています。
「士官が部下と個人的問題について話しかけるのは決して時間の浪費にはならない。たとえ問題自体が士官にとって小さいように見えても、それは当人にとってはきわめて重要と思われるかもしれず、したがって、これを軽視すべきではない」
「部下の問題に真剣に関心を示す政策は十倍になって報われるのであるが、それは一人に起こった出来事はやがて他の人たちにも知れわたるからである」
「部下との人間的接触を維持し、部下を認めてあげるための効果的リーダーシップの技術としては、個人面接とカウンセリングに勝る方法はない」
といった内容が列記されています。
このようにアメリカにおいてカウンセリングは、悪くなったものを治していく治療的・リハビリテーション的役割よりも、むしろ教育的・開発的な役割、または予防的な役割にウエイトがおかれたために発展していったと考えられます。現代の日本で起こっている構造的変化をすでに経験してきたアメリカにおいて、いかにカウンセリング・マインドが求められていったかということをご理解いただけたでしょうか。