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はじめに 職場でカウンセリング・マインドをいかに活かすか

 

(1) 職場カウンセリングの実務経験から

今日の日本社会では、カウンセリングのニーズが高まり、実践も盛んに行われるようになりました。働く人々の精神的ケアが一層に求められる現在、産業カウンセラーという職業にも大きな注目が集まり、ほどなく企業社会に根をおろし、当たり前の存在になると言われています。(社)日本産業カウンセラー協会によれば、産業カウンセラーの主な業務は「心理学的手法を用いて、働く人々が抱える問題を自らの力で解決できるように援助すること」であります。

筆者は約30年前、教職を辞めてこの仕事につきました。それまで、職業柄、学生の悩みには多く触れていましたが、「働くことがうまくいくかどうかが人生にとっていかに大きいか」を感じ、その場面で役に立ちたいと考えたのが、この仕事を選択した理由です。

また、「カウンセラーはサービス業である」と考えてスタートしました。「上に立ってやる職業ではない。自分が何をできるかよりも、相手のニーズに応えよう」と思いました。そして、これから次のようなニーズが生まれることを確信していました。「メンタルヘルスの問題は福祉や治療の分野にとどまらない。職員個人が職場で能力を発揮するためには、自分の問題を整理し、特徴を認識し、それをどう活かせばよいかを手助けすることも含めた、医師よりも幅を広げた仕事が必要とされる」ということです。

その後、そうした活動をより効果的に行うために、(株)日本産業カウンセリングセンターを1976年に発足し、企業や諸官庁、諸団体、マスコミなどで、カウンセリング、講演教育研修や顧問活動を続けてまいりました。経営には、一般に言われる経営資源の他に「気分財」もあります。つまり、最近よく従業員満足度と言われるように、働いていて気分のよい会社かどうか、従業員が能力を発揮してくれる環境があるかどうかということです。

 

 

 

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