デフ・パペットの創立時の宣言は
デフ・パペットシアター・ひとみ とは、ろう者を中心に結成された、人形劇の専門的グループです。
デフ・パペットシアター・ひとみ のつくる人形劇は、ろう者はもちろんですが、聴者にも楽しんでもらう人形劇です。
デフ・パペットシアター・ひとみ は、ろう者の表現能力を生かした、新しい人形劇の分野を開きます。
デフ・パペットシアター・ひとみ は、ろう者の参加により、人形劇の表現をより豊かにするために結成されたものです。
とある。ここで言っていることは、単にろう者の参加する人形劇を作るのではなくて、もっと積極的にろう者の参加によって新しい分野を開こうということであった。
戦後人形劇は「演劇の一ジャンルとしての人形劇」から出発した。これは既製の演劇をお手本として、その枠内でジャンルを生み出そうとしたのである。しかし一九五〇年代後半から、既製の演劇の枠に止まらない「独自のジャンルとしての人形劇」ということが言われはじめた。一般演劇の枠内ではなく独自の表現力をもった独立したジャンルとして作っていこうというわけである。デフ・パペットはその上に立って、更に既製の人形劇の枠を越えたさまざまな方法を取り入れて表現して来ている。
一口で言えば人形による演劇から、人形を使った演劇への転換である。人形は演技者が手摺り(けこみ)などに隠れて遣う形式から、外に出て、演技者の身体をさらして行ういわゆる出遣いが多い。他にも仮面、字幕スーパー、漫画の吹き出しのような手持ちのパネル、それに身体を使った手話、マイム的表現、舞踏などが駆使される。音楽も生演奏であるが、視覚的にも楽しめる工夫がなされている。
これらは今回の「オルフェウス」にも十分反映していると思う。このような方法だけがよいのだとは言わないし、人形劇は多様な方法をもって良いと思うが、我々のいう「人形を使う劇」という概念、いろいろな表現方法を組み合わせた舞台は、現在はヨーロッパ始め各国でも普遍的な方法となっている。人形劇の純粋性を重視する人たちは、このような舞台は一時的な風潮に過ぎないとして批判的かも知れないが、デフ・パペットにとっては今後も欠くことのできない方法だと思っている。ただしデフ・パペットの舞台は固定されたマンネリに陥ってはならない、いつも新鮮な表現をその舞台に発散させなくてはならないだろう。そこでは、プロとしての技術を磨くことも大切だが、それ以前の感覚を絶えず研ぎ澄まさなくてはならないだろう。それはいつも初心にかえって自らを問い直すところにあるだろうと思う。
デフ・パペットの今後の活躍と発展に大きな期待をよせている。