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第3回(11月18日) 警察や司法のとりくみ

 

「警察による対応」 講師:清水訓夫 大阪府警被害者対策室長

これまでの警察では被疑者の人権に対する配慮がなされ、「個人の自由や権利には介入しない」として私生活の範囲には入りこまず、公共の安全に問題が出てきたときに初めて関わるという伝統的な考え方から被害者対策へと変わりつつあります。ドメスティックバイオレンスや児童虐待、けんかなど、これまで警察は入りこめないとされてきた領域で、犯罪によって個人の権利が侵害された場合には警察が積極的に介入すべきであるとして新しい法律や施策が進みつつあります。平成11年中大阪府警で取り扱った刑法犯の認知件数は約20万件であり、単純に20万人の被害者が出たと考えると、人は一生に2回は犯罪被害に遭うことになります。潜在被害者は多数で、誰にもその可能性はあるのですから、緊急を要し、確かな結果を求めたいときは110番の活用が有効ということです。

平成8年から警察庁が取り組み、平成9年から大阪府警でも始まった被害者対策は、被害者の手引きの配布、指定事件に対する被害者連絡制度の導入、地域警察官による被害者訪問から被害者の相談・カウンセリング体制の導入へと進み、指定女性捜査員の配置、性犯罪被害者の診断書料等の支給も予算がつき、今後は「安心phone」というような加害者の服役後の再被害防止対策も考えられていくと思います。また、被害者支援マニュアルの配布も予定されています。

 

「法的支援へのみち」 講師:奥村正雄 同志社女子大学社会学部教授

被害者学の歴史的なあゆみを中心としたお話をしたいと思います。

1960年代にニュージーランドを先駆者として英米で始まった世界の犯罪被害者支援のあゆみを振返り、あらためてわが国の被害者支援対策が諸外国よりも遅れていることを痛感しています。これまで憲法や刑事訴訟法は、その歴史的な背景を踏まえて被疑者・被告人が国家権力によって不当な逮捕や裁判を受けることを防ぐために機能していましたが、被疑者と被害者の人権をともに高めるためには画期的な法改正が必要とされます。

これからの課題としては、刑事司法機関及び弁護士会の支援、精神科医、臨床心理士、カウンセラーの支援が必要となりますが、専門家の業務とボランティアの立場のあり方を明示したきちんとしたマニュアルが作られ、全国均一のサービスとして提供されることが望まれます。ボランティアといえども、警察とは対等な協力関係を保ち、活動に政治と宗教を持ち込まないという厳重な線引きが必要であることについても考えを深めておく必要があると思います。

 

修復的刑事司法や少年法改正を踏まえた少年の保護と更生についての質疑応答がありました。

 

 

 

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