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5周年記念号に寄せて

 

大阪被害者相談室への期待

 

全国被害者支援ネットワーク会長

東京医科歯科大学教授 山上皓

 

私が大阪YWCAの皆様に出会ったのは、阪神淡路大震災被災者への支援活動の中でのことです。大阪YWCAが被災直後に被災者の精神的なサポートを目指す「こころのケア・ネットワーク」を立ち上げると聞いたとき、私たちもお願いして仲間に加えていただきました。被災者の方々の支援に、私たちが犯罪被害者相談室で被害者支援の実践を通じて得た経験を生かしていただきたいというおもいからと、大阪YWCAというボランティア組織の優れた企画・行動力に魅せられての決断でした。「こころのケア・ネットワーク」によって新たに開始され、困難な問題も多くあったはずの被災者への支援を、しっかりと継続、発展させ、次の世代に生かされるような成果を上げて終えられた大阪YWCAの皆様の努力と力量にあらためて敬意を表させていただきたいと思います。

大阪被害者相談室の誕生は、この被災者支援を通じての、大阪YWCAと東京医科歯科大学犯罪被害者相談室という二つの組織の交流と、信頼の中から生まれたものです。協力が始まって1年ほど経ち、総幹事の鹿野幸枝氏に大阪での被害者支援組織の立ち上げ打診して前向きの返事をいただいたときの嬉しさを、今も憶えております。早速、地元の専門家の方々に顧問としてご協力いただこうと、同志社大学の大谷實先生と、大阪大学の三木善彦先生のところへYWCAの皆様と一緒にお願いに上がり、お二人ともに快くお受けいただいた日のことも、まるで昨日のことのように思い浮かびます。

大阪被害者相談室は、ボランティアを中心とする組織ですが、私はそのことに当初から特別な期待を抱いておりました。被害者支援先進国とされるアメリカやイギリスなどでは、被害者支援活動の主体はボランティア援助者です。ボランティアが主体となることは、被害者の社会への信頼の回復にも有効に働きますし、被害者問題への社会の意識改革を広めるにも効果的です。市民としてのボランティアが被害者支援を通じて警察や司法機関に触れることは、警察や司法機関の意識改革のためにも大切なことだと思います。東京の犯罪被害者相談室では、精神科医や心理臨床家が中心となって活動を始めましたが、ボランティアの方々に加わっていただき、ボランティア援助者の育成を図ることは、私たちの懸案でもあったのです。

大阪被害者相談室が全国で3番目の民間被害者援助組織として誕生から、早くも5年になろうとしております。

 

 

 

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