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被害者支援と自助グループ活動

 

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被害者支援都民センター 支援相談室長代理 大久保恵美子

(写真・読売新聞社提供)

 

被害者保護法が、平成十二年十一月一日に施行されましたが、被害者の基本的人権を守るには、いまだ充分とは言えず、裁判等の刑事司法に積極的に関わることも、必要な情報をタイムリーに得ることも、心のケア等を受けることも保障されていません。そのうえ、事件直後の危機介入等の支援もありません。これが、日本の被害者が置かれている現状です。

そのため、社会に対する信頼感を失い、国への絶望感を強くしていく被害者は「こんなに辛い目に遭っているのに、誰にも助けてもらえない自分など生きていても価値がない」と自己否定感に陥り、周囲の人たちから孤立感を深め、追いつめられていきます。

それを防ぐには、事件直後から被害者に対し、日常生活を送るために必要な支援を行い、事件に関する情報提供をするとともに、被害者が悲しみや怒り等の感情を持つことは当たり前であって、立ち直るには長い時間がかかることは、誰でも当然の症状であるということを教えて頂ければ、被害者は安心することができます。また被害者の中では、社会通念上許されないような言葉も当然のこととして受け入れてもらえ、思いの丈を話せるので、自分でも気付かなかった心の奥底の感情に気付き、精神の安定を取り戻すことも出来ます。最近では、被害者同士で集う必要性を感じた被害者が、地元の支援センターの協力を得て、自助グループ活動を始めました。

自助グループを始めた被害者の方からは「被害者は心の被害者だが、一声かけてもらえれば動けるし、他の被害者に会うとやさしさと勇気が得られる。」とか「被害者の気持ちを説明しなくても分かってもらえるし、一人では小さな力でもたくさん集まれば大きな力となり、動かないものも動かせるかも知れない。」、また「集いに参加する時は安心して話せて心から安らぐ。次回も仲間に会える楽しみがあるので、何とか一日一日を暮らせる。」等と話してくれます。このように、被害直後から仲間や専門家、支援者から適切な支援を受けることが出来れば、破壊されてしまった自尊心や社会への信頼感も再び取り戻すことができ、社会で生きていけるようになれます。

そのためにも、身近な所にある自助グループが、被害者への連絡や家庭訪問を行って支援することは、大きな意味があります。被害者自身が十分に支援されて癒されていれば、新たな被害者に対して、体験者である自分にできる支援を行う大切さに気付きます。

全国にたくさんの自助グループが早くでき、被害者支援の一端を担えることができればと願っています。

しかし、普通に暮らすだけでもストレスの大きい被害者が、被害者を支えるということはとても疲れることから、長く続けるためには、協力をしてくれる支援者の存在と、経済的基盤の整備が不可欠です。

「被害者支援都民センター」でも、今年六月から自助グループの活動を始めました。

仲間の中で癒される心地よさを体験することから、いずれは、自ら自助グループを開きたいと考える被害者が出て欲しいと考えながら運営しています。

現在は、遺族を中心とした自助グループですが、将来的には、傷害を受けた被害者本人や強姦被害者等の被害別の自助グループも必要だと考えています。

被害者になったことで、今まで気付かなかった日本社会の理不尽さや不平等さに直面させられた被害者が、堂々と発言をして権利を要求できる社会は、次の世代においても暮らしやすい社会であると信じ、今後も支援活動の充実をめざしていきたいと思っています。

 

 

 

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