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4.2 現地調査結果のまとめ

外海に面した砂浜海岸の潮間帯における底生生物相と海浜形状や底質環境との関係を把握して、砂浜の生物環境を評価するkeyを見いだすことを目的に相模湾沿岸の12海浜をモデルとして現地調査を実施した。

その結果、外海性砂浜の底生生物相については、種類数は少ないが、砂浜に特有の種が分布し、また、種類組成は潮位との関係が強いことが明らかとなった。また、生物量については、出現個体数、出現湿重量が少ない海岸が多いものの、場所によってはヒメスナホリムシやフジノハナガイのような砂浜特有の種が高密度で出現することが示された。なお、生物量については、既往研究事例によると季節的変化が著しいことが報告されているため、正確な調査結果を得るためには、砂浜の生物の年変動を明らかにしていく必要があると考えている。また、本調査の対象位置は、HWL、MSL、LWLの3点にて行ったが、砂浜の潮間帯に分布する生物は、潮位に対応した分布様式をとることを考慮すると、潮位との関係をより詳細に明らかにしていく必要もある。

底生生物相と砂浜の環境条件との関係については、砂浜潮間帯の海底勾配と底生生物相との間に関係があることが示唆された。また、LWL付近に限られたことであったが、一部、底質の粒度が細かいと生物量が多くなる傾向にある可能性も示された。

 

また、本調査の中では人工海浜の事例として熱海サンビーチの1海岸のみを対象とした。この海岸で出現した生物は少なかったが、この原因として考えられることとして、砂浜の安定性をあげることができる。対象とした熱海サンビーチでは、砂浜を構成する砂の粒度が小さい割には海浜勾配が急峻で、侵食性の海岸であると考えられる。このことは汀線付近が常に不安定な状況にあることを想定することができ、このことが砂浜を生息基盤とする生物相を貧弱なものとしている可能性がある。これは、1海岸における1回の調査結果から想定された仮説でしかないが、今後、侵食対策を施していくにあたり留意すべき事項と考えられる。

 

 

 

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