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2] 生物的浄化機構

生物的浄化機構に係わる生物群としては、大きく堆積砂に付着する細菌群による作用と濾過食者を中心とする底生生物群による濾過による作用が主なものである。実際にはこの両者やその他の要因が複合的に影響しあっているため、これらを分けて浄化能を算定したものは少ない。

 

【細菌群の浄化能:津市町屋浦海岸の研究例】

細菌群による浄化作用に着目した研究例としては、昭和40年代後半から昭和50年代にかけて運輸省第五港湾建設局により行われたものが先駆的である。

ここでは、海水交換量の推定、有機物分解活性の推定、砂浜の細菌数の係数などの調査が行われている。

 

砂浜の細菌

林(1978)1は、砂浜における各種細菌数を培養法により測定しているが、砂浜の細菌群数は冬季に若干減少する以外は年間を通じて大きな変動は無いこと、一般的傾向として、鉛直的には砂浜の表層部の方が下層部よりも細菌数が多く、岸沖方向には低潮線に近い方が、高潮線や後浜よりも多くなる傾向にあることを示している。

砂浜を出入りする海水中の細菌群は、Acinetobacter属、Pseudomonas属、Vibrio属、Flavobacterium属などに属する菌株であるとしている。

 

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3.6 津市町屋浦海浜砂の試料採取地点

 

1 林孝市郎(1979):砂浜による浄化。「水域の自浄作用と浄化」日本水産学会編、水産学シリーズ30、111-124、恒星社厚生閣、東京

 

 

 

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