2) 研究の現状(事例整理)
水質浄化機能に関しては、構成砂が濾過材となり物理的な懸濁物質の除去による事例(室内実験)、細菌群による溶存有機物の無機化あるいは硝化に関する事例として、津市町屋浦海岸における事例、水槽実験による事例、高知県沿岸の海浜砂を用いた室内実験に関する事例、三浦半島灯明堂海岸における数値モデル的解析、底生生物の濾過摂餌による粒状物除去に関する事例として、東京湾沿岸における事例、砂浜の代表的な藻類であるアオサによる無機窒素とりあげ速度に関する事例、葛西人工海浜、稲毛・検見川人工海浜における事例について整理した。
物理的濾過作用については、海浜勾配が0.1程度で最大となり、構成砂の粒度が大きいほど、透水係数が大きくなるほど、多くの海水の出入りが大きくなり、その結果、総量としての水質浄化量が大きくなることが明らかにされている。
細菌群による浄化については、先ず細菌が付着する砂粒がある程度小さいほど付着面積が大きくなり効率的であるとされているが、最適粒径に関する指標は見られない。なお、無機化のみにとどまらず脱窒作用による海水からの窒素除去に関する砂浜における事例は確認出来ていない。
底生生物群の浄化能については、富栄養化が進行した東京湾における事例のみであり、正確な評価は出来ないが、アサリなどの二枚貝類が高密度で生息する場所については、高い浄化能を有するものと考えられる。なお、砂浜の形状に関しては、砂浜の汀線付近の勾配が緩く、砂浜幅が広いほど浄化量が大きくなるとの報告があるが、これは面積が広がることにより、生息する生物量が増大するためであろう。
一方、外海に面した砂浜では、底生生物量自体が多くないため、底生生物の浄化能は低いことが考えられる。このため、細菌群の役割が大きく評価されることになるが、底生生物の浄化能は、海水中の栄養物質を体内にとりこみ、さらに来遊する魚類や鳥類により捕食されることや漁獲などにより、海水中から栄養物質を取り上げることとなり、海藻・死骸などの生物性漂着物の分解過程や無機化のみにとどまる細菌群の浄化能を補足する役割は重要であると考えられる。