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また、海上保安庁は、航行警報を発して、運航船舶に対して情報提供及び情報収集を要請するとともに、外務省に対して、関係各国への捜索・情報収集の依頼を行うように申し入れた。さらに、海上保安庁は、ヘリ搭載巡視船を現場海域(マラッカ海峡付近)に向かわせて捜索活動を行った。

その後、グローバルマーズ号の乗組員全員がタイで救助され、さらに同船体は、6月に中国で発見されている。

この事件も、アロンドラ・レインボー号事件と同様の事案について、海上保安庁が実際に捜索活動を行った事例ということになる。

 

(6) ASEAN EXPRESS号船内暴動事件(平成12年)

平成12年8月4日、シンガポール船籍の貨物船アセアンエクスプレス号(10727トン。乗組員は、中国人18名、ミャンマー人2名、インドネシア人2名の計22名)が、韓国・釜山港からマニラに向けて航行中、沖縄本島西北西330キロメートルの公海上において、船員の暴行により船長が重傷を負い、船舶の航行にも支障を生じており、早急な救助を要請する旨のテレックスを発した。連絡を受けた第11管区海上保安本部は、巡視船・航空機を現場海域に派遣した。巡視船がアセアンエクスプレス号と会合して情報収集したところ、乗組員の一部が暴動を起こしていることが判明したため、旗国であるシンガポール政府からの要請を受け、負傷者を救助し、万一の暴動の再には鎮静化を図ることとして、該船を宮古島に向かわせるとともに、武装した海上保安官が同船に移乗した。5日午前1時58分までに、武装した海上保安官が暴動を起こした中国人乗組員9名全員の身柄を確保し、船長を宮古島の病院に搬送した。暴動を起こした乗組員は、船内で隔離され、アセアンエクスプレス号はマニラに向けて航行した。

この事件は、公海上の外国船舶内において暴動が発生し、わが国の海上保安庁が救助要請を受けた上で事態を把握し、旗国の要請の下に、負傷者の救助・暴動の鎮圧を行ったというものである。

 

(7) 事例の整理

以上の5件について、簡単に整理しておく。事例1と事例5は、公海上の外国船舶内での船内暴動に対して、救助要請を受けた海上保安庁が対応措置をとったものである。

 

 

 

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