運輸省は、直ちに、海上保安庁より関係各国の捜索救難当局に情報収集を求めるとともに、外務省、船主等を通じての関連情報の収集と確認を開始し、船主に対しては、沿岸国当局に同船の捜索を依頼するように指示した。また、わが国は、外務省をとおして、沿岸国に対して積極的な捜索・救難を要請した。海上保安庁は、ヘリ搭載巡視船・航空機を南シナ海・マレーシア東岸沖に派遣し、アロンドラレインボー号の予想航路筋を中心に捜索活動を行った。
その後、11月9日に至って、同船の乗組員全員が、タイ・プーケットの水上警察に保護された。同船は、出航直後に、武装した強盗団に襲撃され、乗組員は全員が救命いかだに乗せられて海上に置き去りにされたことが判例した。なお、強奪されたアロンドラレインボー号は、インド・ゴアの西の洋上で発見され、11月16日に、インドの沿岸警備隊によって捕捉・身柄確保等がなされている。
本件は、結果的に見ると、日本人乗組員が直接の被害者になった海上での武装強盗事件に関して、海上保安庁が捜索活動を実施した事例ということになる。実際に捜索活動が行われた時点では、武装強盗ないし海賊類似事件と判明していたわけではないが、捜索活動の段階で、仮に武装強盗団等と遭遇した場合、わが国の海上保安官による権限行使がどのようになされるべきなのか、その法的根拠はどうなるのか、といった問題点を示すものと言えるであろう。
(5) GLOBAL MARS号消息不明事件(平成12年)
わが国の船舶会社(ジーエムエス・ライン)の運航するパナマ船籍のケミカルタンカー、グローバルマーズ号(3729トン。乗組員は、韓国人7名、ミャンマー人10名の計17名)が、パームオイル約6000トンを積んでマレーシア・ポートケラン港からインドヘ向かう途中、平成12年2月23日以降消息不明となった。同船の運航者は、マレーシア救助調整本部を通じて関係各国に捜索を依頼した。わが国の海上保安庁は、衛星通信により該船に連絡を試みたが、不通であり、関係各国RCCに対して、本件に関する情報提供及び情報収集を依頼した。