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これを受けて、第3管区海上保安本部では、巡視船2隻(しきしま、うらが)及び特殊警備隊員12名を派遣した。25日には、巡視船が現場に到達し、無線により乗組員から事情聴取し、さらに、海上保安官が乗船し状況調査と事情聴取に及んだ。26日になって、わが国外務省は、「我が国に捜査管轄権がないため、韓国政府がホンジュラス政府からの同意をとりつけることを前提条件として、公海上で海上保安庁の巡視船より韓国当局の船舶に引き継ぐ」との対処方針を決定した。28日には、韓国政府の要請を受けた外務省が、「現時点では未だ同意は取り付けられていないが、韓国救難艦「太平洋」が現場に到着次第、韓国側に引き継ぐ」と対処方針を変更した。この間、海上保安庁の特殊警備隊員らが同船内で監視警戒にあたっていたが、同日、韓国救難艦「太平洋」が現場に到着し、同船の船体及び乗組員を引き渡した。

ペスカマー号事件も、公海上の外国船舶で発生した事件であり、乗組員に日本人は含まれておらず、捜査権が日本にないことは一応明らかである。しかし、燃料切れによってわが国の領海内に漂流してきており、わが国の海上警察機関による救助の措置がなされることもまた当然であり、日本の港へ曳航すべきであったのか、問題とされる余地があろう。さらに、韓国における報道等によれば、犯人の中国人らは、事件後は日本への密入国を意図し、船内にいかだを準備していた、ということがあり、密入国の捜査等が可能であるのか、という問題もあろう。いずれにしても、海上保安庁は、事情聴取・状況調査・ペスカマー号への給油等を行っており、これらの措置の法的な意味付けについて、考察が必要になるであろう。

 

(4) ALONDRA RAINBOW号消息不明事件(平成11年)

わが国の船舶会社(東京船舶)が運航し、日本人船長及び機関長(その他び乗組員15名はいずれもフィリピン人)が乗船するパナマ船籍の貨物船アロンドラレインボー号(7762トン)は、アルミ・インゴット約7000トンを積載して、平成11年10月22日に、インドネシアのクアガランジュン港から日本に向けて出向した後、定期連絡がなくなり、連絡のとれない状況となった。同船の船主は、26日から国際海運関係者に対して本船の消息に関する情報を求めはじめ、27日には、社団法人日本海運防止協会をとおして、運輸省も連絡を受けるに至った。

 

 

 

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