日本財団 図書館


両船舶か港内で捕獲されたのであれば、法律上、それらの犯罪は海賊の行為にはならないという主張が、強くはないにしても出てくるであろう。それは、ありうることである。しかし、私は、港が国家領域の一部を構成するから、その港内で犯された強盗及び殺人はすべて海賊たる性格を失うという原則を採用しようとは考えない。ラッセルが引用した事実からこの点を判断すべきである。つまり、別の理由、すなわち、制定法が沿岸で行われた行為を明らかに念頭においている点を考慮して結論を導くべきであると考える。その文言は、「6月1日以後、海上又は沿岸で(afloat or ashore)海賊と認められるものに攻撃を加え、又はこれと交戦した」であり、それが沿岸で行われた場合、明らかに海賊犯罪又はその種の犯罪であると認めているからである。海賊は永久に海上にいるわけではなく、必要に応じてあちこちの沿岸に行くものであるから、そこで彼らは追跡され、捕獲されなければならない。

ただし、本件では、両船舶は最初にそれらを乗っ取った者が、そのまま海上に運び去り、航行させている。そこで、私は、この海上での占有が海賊的占有(piratical possession)だったのであり、また殺人及び強盗の継続だったと考え、更に、公海上へ両船舶を運び去ることは最初の乗取りとは全く独立した海賊行為であったと考える」(1 Sp. Ecc. & Adm. at 86-7)。

 

2 領海制度の確立と国際法上の海賊

(1) 領海制度の確立

このように、19世紀に発生した英米の国内の海賊立法及び著名な海賊事件の判決を概観すれば、当時の領海幅は3カイリとされていたのであるが、その領海の内外を問わず、海賊行為の成立を認めている。その理由は、二つの側面から説明することができよう。一つは、いずれの事件も国内法に定める海賊行為が問題とされているのであって、国際法上の海賊行為として処罰しているわけではないことである。国内法上の海賊行為は、それを公海上の海賊に限定する必要はなく、領海内、公海上を問わず処罰の対象とすることができるからである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION