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事件を知った英国は、英国軍艦ビラゴ号(Virago)をマゼラン海峡に派遣した。ビラゴ号は、1852年1月28日、公海上で、反乱軍からのコミッションを得て運航中のエリーザ・コルニッシュ号を発見し、追跡の後、射撃によって停船させてこれを拿捕した。更に、ビラゴ号は、反乱の首謀者を捕らえるために海上を捜していたところ、2月15日、別の港(Wood's Bay)に停泊中のフロリダ号を発見した。フロリダ号は、エリーザ・コルニッシュ号から奪った財産が積まれていたが、反乱者がみずから投降して、その港に回航してきたものであった。

(イ) 判決

「フロリダ号船内には、エリーザ・コルニッシュ号から略奪した財産が発見された。フロリダ号に乗船していた米国人以外のすべての者はチリ当局に引き渡された。

これら犯行の一般的性格について、私は疑問を抱くことはできない。たとえ、本件行為が反乱者の行為であったという特質を認めざるをえないとしても、私はなお、それが海賊行為であるという見解をとる。私の判断としては、暴動又は反乱と全く結びついていなかったのであり、世界の何れかの別の場所に行くという当事者の意図とも結びついていなかった以上は、またそれも海賊行為である。それは、ある意味では、外国国民の殺害であり、そしてその者達の財産の無差別な略奪であり、恣意的な残虐行為にほかならない。私の考えでは、これらの行為を行った者は、別になんらかの反論がなされない限り、海賊行為として有罪である」(1 Sp. Ecc. & Adm. at 86)。

「これら行為は、公海上で犯されたものではない。従って、法律上、この殺人及び強盗を海賊とするのは適当でないと言われている。この反論は、検討に値する。殺人及び強盗が陸上で行われ、かつ明らかに海賊たる者によって行われたものでないならば、それは海賊行為でないことは確実である。ここで、私が理解した事実によれば、エリーザ・コルニッシュ号及びフロリダ号は港内で乗っ取られたのであり、そして、殺人は港内で行われ、また船内から上陸させた陸上で行われた。

 

 

 

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