6] 太平洋におけるながし縄漁業への抗議行動
平成2年当時行われていた北太平洋における流し網漁業への抗議は、日本のながし網漁業が貴重な海鳥やイルカをも犠牲にしているが故に、網を切断することによって妨害するということを、グリーンピースが表明し、平成2年8月、シーシェパードII号が日本漁船のながし網を切断する等の操業妨害行為を行った。このような事態に対応するための考え方として、それは公海上における日本漁船に対する海賊行為と解釈すべきではないかという議論がなされたことがあった。網を切断することが、船舶に対する暴行といえるか等も議論されたといわれる。そして、海賊鎮圧という名目で日本漁船を保護するべく、ヘリコプター搭載型巡視船が北太平洋の海域にでかけたこともあったが、そのときは相手が来なかったという。これらの行為は海賊をもって議論すべき余地がある事例だ言うことができるように思われる(8)。
7] パナマ貨物船「EB・キャリア号」船内暴動事件
平成元年8月13日1340頃、韓国のウルサンからオーストラリアのポートヘッドランド向け航行中のパナマ船籍鉱石運搬船EBキャリア号(86098トン、乗組員39名、内英国人5名、フィリピン人32名、トルコ人2名、以下E号と略)船内において、労働時間、食事等に不満を持つフィリピン人8名が、待遇の改善を要求し、E号の機関を停止し、凶器を示して英国人士官を脅迫した。身の危険を察知した英国人士官5名が舩長室に避難して翌朝までたてこもり、この間、暴動を起こしたフィリピン人乗組員が、ナイフ、防火斧等の凶器を所持して船長室のドアを攻撃のうえ一部を破損させ、船長室内への侵入を試みた。このため、13日1700頃、沖縄本島の南南西326キロの公海上を航行中のE号から「船内で暴動が発生した。英国人幹部5名が暴徒の攻撃下にある。部隊、ヘリコプターの援助を要請する」旨インマルサットを通じて直接海上保安庁へ繰り返し通報があった。通報を受けた海上保安庁では第11管区海上保安本部に対策本部を設置し、巡視船艇8隻・航空機9機を出動させるとともに、公海上を航行中のパナマ船籍内での英国人に対するフィリピン人の暴動という事件のため、国内関係機関、英国及びパナマ国大使館、在那覇フイリピン国名誉総領事等関係機関へ事件発生の連絡を行った。