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このように、平成3年3月の八幡丸事件以来、東シナ海の公海上において日本及び外国の漁船、貨物船などが不審船から発砲、追跡を受けるという事件が頻発した。このような事例において、巡視船が出動した典型的ケースとしては、次の4]、5]の事例がある。

4] 平成5年1月14日深夜、東シナ海の公海上において、我が国の漁船が、約80トンの無灯火の不審船(当初船名、番号、国籍等不詳、船型漁船型)に、距離0.2海里まで接近され、突然探照灯を照射されるとともに2発の発砲を受けた。同漁船がこれを回避するために全速力で航走したところ、不審船はしばらく追跡した後離れていった。通報を受けた海上保安庁では、配備中の巡視船2隻を現場に急行させるとともに、航空機を出動させた。航空機との連携の下に現場に到着した巡視船は、付近にて徘徊中の不審船を確認したが、不審船は船名、番号の表示がないほか、国旗を掲揚しておらず、巡視船からの質問に対しても何等の応答もなかったことから、不審船に停船を求め調査した。この結果、同船には中国浙江省杭州海関の職員と称する者が乗船していたことから、中国政府に対し、外交ルートを通じて照会したところ、この不審船は浙江省杭州海関が用船した公船であり、密輸取締りに従事していたことが判明したという。

5] 平成5年5月11日深夜、東シナ海の公海上において、長崎県の漁船が、約100トンの不審船(船名、番号、国籍、船型等不詳)に、探照灯を照射されて接近された。同漁船がこれを避けようとしたところ、さらに接近され、2時間にわたって小銃等により断続的な発砲を受けた。不審船は同漁船に乗り込もうとして盛んに接舷を試みていたが、そのうち諦めて離れ去った。現場付近の僚船から通報を受けた海上保安庁では、配備中のヘリコプター搭載型巡視船を含む2隻を急行させるとともに、航空機を出動させ、不審船の捜索を行ったが、既に不審船の姿はなかった。調査の結果、同漁船の船体には30発の弾痕が確認されたが人命には異状がなかった(6)

原則として、国旗を掲げない、この場合中国の船舶による「海賊まがい」の干渉行為については、ラズエズノイ事件の判決でも明確にされたように、公船の行動と考える必要はないわけで、海賊行為と認定することも可能だという議論もなさている(7)

 

 

 

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