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また、「関税法」(昭和29年4月2日法律61号)では、まず、輸入禁制品のうち薬物・けん銃・偽造通貨等の輸入罪が5年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金、又はこれを併科し(関109条1項)、輸入禁制品のうち公安風俗侵害物品・工業所有権等侵害物の輸入罪が5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又はこれを併科するとされている(関109条2項)(4)。また、禁制品輸入未遂罪、禁制品輸入予備罪が設けられているが、輸入罪と同一の法定刑を規定されている点が注目される(関109条3項)。また、無許可輸入罪は3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はその併科とされ(関111条1項)、無許可輸入未遂罪、無許可輸入予備罪が規定され、無許可輸入罪と同一の法定刑とされている(関111条2項)。ただ、これらの規定には国外犯の処罰規定がない点も注意を要する。特に、輸入予備罪の国外犯処罰規定がないと、接続水域で禁制品を積み替えるケースを直ちに取り締まることが不可能となるので規定整備の必要があると思われる(5)

 

3. 外国船舶に対する密輸入の取締り

次に、船舶による密輸入事犯をどのように取締ることが可能であろうか。日本船舶に対しては、海域を問わず旗国主義が妥当するので後は執行手続きに関する国内法令の問題に尽きるが、外国船舶の場合は、海域によって沿岸国の主権の及ぶ範囲が異なるので、国連海洋法条約との関連で取締りの限界を海域別に検討する必要が生ずる。

(1) 領海

領海は、内水と同様、沿岸国の領域に属するが、国際海上交通の利益を保護するため、すべての国の船舶に無害通航権が認められている。国連海洋法条約によれば、無害通航とは、沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない航行のことであり(条約19条1項)、通航は継続的かつ迅速に行われなけれぱならないとされている(条約18条2項)。そして、外国船舶が領海において19条2項に列挙された活動に従事した場合は有害通航と見なされる。すなわち、同条2項の(g)は「沿岸国の通関上、財政上、出入国管理上又は衛生上の法令に違反する商品、通貨又は人の積込み又は積卸し」を、(1)は「通航に直接の関係がない他の活動」を有害通航に当たるものとして規制の対象にしている。したがって、規制薬物を外国船舶が領海内で積替える行為は(g)に、銃器を積替える行為は(1)に該当するものと思われる。

 

 

 

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