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そして、営利目的の場合には一層加重することとし、国外犯も処罰することとした(46)。密航の手引きをするなど密航を助長したとして検挙された者の数は、平成8年(1996年)に83人、平成9年(1997年)に75人、平成10年(1998年)に138人、平成11年(1999年)に76人を数え(47)、集団密航をさせる罪などで処罰されている。

(ウ) 議定書への対応

わが国は、平成12年(2000年)12月に本体条約には署名したが、附属議定書には署名していない。そこで今後、議定書と国内法の突合せが必要となるが、4の(1)や(2)で述べたことを基本に行われることが妥当であろう。現行法は上述のように既に平成9年(1997年)に一定の整備がなされているから、4の(1)や(2)に述べたように行なわれれば概ね対応できようが、新たな規定として問題となるのは、人を密航させるために営利目的で自己以外の旅券・乗員手帳を所持する行為であろう。

また、この罪の場所的適用範囲については、行使にまで至らない態様であるため域外適用の必要がそれほど高いとは思えないが、刑法犯の偽造公文書行使は保護主義により国外犯を処罰していること、出入国管理及び難民認定法第74条の6に定める自己以外の旅券・乗員手帳の提出の国外犯規定も第74条の7に定められていることとのバランスを考えると、条約上義務づけられているものではないが、条約上認められている権能の行使として、国外にも拡張することも考えられよう。

もう一つは、密航させる行為などにより密航者の生命・安全に危険を生じさせるなどした場合の加重規定(48)であろう。

 

(2) 執行

(ア) 領海及び接続水域に関する法律による体制

外国密航船に対する執行は、基礎となる実体法規定と、権限を定める手続法規定が整備されていることが必要であるが、領海については従来から問題がなかった。領海外の執行についても、5の(1)で述べた実体法の整備と前後して、国連海洋法条約批准に伴う国内法整備の一環として、既に接続水域、排他的経済水域及びそこからの追跡については整備がなされている(49)。ここでの密入国に関しては、接続水域とそこからの追跡が対象となる。領海及び接続水域法第5条はそのことが可能となるように定められている。

 

 

 

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