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5 領海外の外国密航船に対するわが国の規制

(1) 実体法

(ア) 平成9年改正前の法と密航の組織化

かつて、わが国においては、船主、船長などが密航を知っている場合か知らない場合かという、この二つの場合を特に区別してこなかった。密入国の規制については、出入国管理及び難民認定法がこれを定めてきたが、まず密入国者自身に着目し、密入国行為そのものを犯罪として捉えた。その上で、密航者の存在を知ってこれを密入国させた者は、その共犯として把握した。その多くは幇助犯として理解された。しかし、わが国でも、平成9年(1997)年には若干の変化が見られた。

わが国において、船長等が密入国を知った上で密航させている場合の態様には、(a)中国船等を密航船として仕立てて直接わが国へ密航するもの、(b)わが国沖合いで中国船等から日本船に乗り換えて密航するもの、(c)韓国沖合いで中国船等から韓国漁船に乗り換えて密航するもの、(d)貨物船等により密航するもの、などがある。平成2年(1990年)に(a)の態様が登場し、平成8、9年(1996、1997年)に急増した。この間貨物船の船内に潜伏してくるものも含めて集団化し、船主、船長等が密航をさせている類型が、主流となった。平成10年以降は、(a)、(b)の形態は減少したが、(c)や、(d)のうち船内に巧妙に設置された隠し部屋に潜伏してくる形態が増加している(44)。そして、蛇頭と呼ばれる国際的密航ブローカーが、わが国の暴力団や韓国の密航組織と手を組んで、漁船保有者や不法滞在者を抱きこみ、密入国者の募集や運搬、入国後の陸路や住居の手配、就職の斡旋を行なっている(45)

(イ) 改正後の法と実際

そこで、平成9年(1997年)の出入国管理および難民認定法の改正で、自己の支配下にある集団密航者をわが国に入国または上陸させる罪や、自己の支配または管理下にある集団密航者をわが国に向けまたはわが国内で上陸の場所に向けて輸送する罪を独立に規定し、密入国した者に対する3年以下の懲役・禁錮若しくは30万円以下の罰金またはその併科に比して、これらの罪を犯した者をより重く処罰することとした。

 

 

 

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