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4 人を密入国させる行為の防止に関する議定書

(1) 犯罪化を義務づけられた行為と密航者の取扱い

(ア) 議定書第6条の内容

議定書第6条で犯罪化を義務づけられた行為は、第3条との関係で錯綜しているが、営利目的で人を密入国させる行為、人を密入国させるために営利目的で旅券・乗員手帳を偽変造または不正作出する行為、人を密入国させるために偽変造または不法に発行もしくは取得された旅券・乗員手帳を営利目的で斡旋・提供・所持する行為、人を密入国させるために正当な所持人以外によって行使される旅券・乗員手帳を営利目的で斡旋・提供・所持する行為、営利目的で不法在留させる行為、これらの行為の未遂・共同正犯・教唆、斡旋・提供・所持を除くこれらの行為の幇助である(29)、と理解される。斡旋・提供・所持の幇助については国内法の概念に適合する限りで犯罪化が義務づけられる。そして、人を密入国させる行為・偽変造不正作出行為・不法在留させる行為が密入国者・不法滞在者の生命・安全に危険を生じさせるかそのおそれのある場合または搾取を含む非人間的なもしくは尊厳を傷つけるような扱いを伴う場合には、刑を加重することとされている。そうした行為の共犯についても、国内法と適合する限りで加重するものとされている(30)

これらの行為の犯罪化は、議定書第4条が、本体条約と同様に、適用範囲を、犯罪組織によって国境を超えて行なわれる犯罪とすることを定めている(31)から、義務づけは基本的にその範囲に限定される。家族や支援グループなどによる場合は、第6条の営利目的という文言で外されると、起草委員会での審議では考えられていたようである(32)

(イ) 国内法化のあり方

こうした行為をどの程度忠実に犯罪化しなければならないかについては、管轄権の設定との範囲とも関係して理解される必要がある。犯罪組織によって国境を超えて行なわれるという犯罪の性質上、防止に国際協力が必要な性質を備える点はあるものの、法益自体は、なお各国国内法上の出入国管理上の利益にとどまるから、大筋において可罰的範囲が一致すればよく、締約国の国内法上受け止めやすい形で規定すればよいものと判断される。

 

 

 

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